大学入学希望者学力評価テスト(新共通テスト) 記述式問題を民間に委託することを検討
2020年度より実施予定の新共通テストの記述式問題についての問題点は以下の8/26のエントリーで述べましたが、その後、文部科学省では、記述式問題の一部を民間に委託することを検討しているとのこと。
各大学が採点する仕組みでは負担が大きいと大学側が反発していることを受けての検討だとは思われますが、これも色々な問題点がありそうです。
確かに、例えば河合塾が実施している『全統記述模試』の今年度第2回におけるもっとも受験者が多い英語では受験者が約30万人。現在のセンター試験の受験者が約56万人ですから、まあ河合塾とかベネッセを母体とする民間企業(群)であれば、あと4年で採点できる仕組みを作ることは可能なような気もします。
では、実際に採点するのが誰なのか?
いくらマニュアルがあり、指導をする立場の職員がいるにせよ、所詮実際に採点するのはアルバイトか、せいぜい派遣社員ということにならないのでしょうか?アルバイトや派遣社員の能力を低く見ているつもりはありませんが、『明日から採点業務・・・』とか『採点したけど、けっこういい加減なもんだった』等とSNSでつぶやく人が出ないとも限りません。また、採点者、集計者、入力者等を採用する場合に(恐らく短期間限定の採用のはず)本当にその人には受験者の親族・利害関係者等がいないということをどうやって担保するのでしょうか?
記述式を民間委託することで受験料は上がらないか?
センター試験の受験料(3教科以上)は18,000円です。民間委託するということは、当然その費用が上乗せされることになると思いますが、受験料は上げずに済むのでしょうか?
委託先内部のファイアーウオールをどこまで信頼できるか?
先ごろのベネッセでの情報漏洩事件が記憶に新しいですが、本当に委託先から情報が外部に漏れることはないのでしょうか。外部に漏れることも心配ですが、委託先内部で他部門への情報流出はないのでしょうか?
例えば採点のためには、おそらく膨大な量の『採点マニュアル』が渡るはずです。『○○と書いてあれば満点』『××の要素が入っていなければ減点』等です。そういった「貴重な情報」を手に入れた委託先(または、委託先の個人)は、必ずそれを自分の顧客獲得に活かそうとするのではないでしょうか?
「いやあ、内緒なんだけどね。こういう書き方すると減点対象なんだよね〜」などと授業でしたり顔で喋る予備校講師も出るかもしれません。
そもそもが50万人の記述式テストをするっていうことが無理筋なのですが、もう引っ込みがつかないのでしょう。まあ、各大学に採点をやらせるっていう非現実的な方法よりはマシかも知れませんが、上記のような問題点を少しでも緩和し、また、新たな利権の構図を生まないことを望みますが、何よりも、「どうなるんだろうな」と不安な将来の受験生、それを指導する学校現場に、これ以上の混乱を与えないことを願います。