知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

私立大学専願(私文専願)やめた方がよい理由

 私立大学専願(私文専願)やめた方がよい理由

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高校に入ったばかりの高1年生や、夏休みを過ぎた高校2年生。

今頃の季節になるとこんな声を毎年よく聞きます。

 

「数学が苦手でできるようになる気がしない」

「化学のモルとか意味が分からないから捨てるしかない」

「物理基礎の定期試験マジ死んだ」

 

先生、数学とか理科とか捨てて私立大学専願(私文専願)にしたいんですけど・・・

 

実際、地方の進学校の中には、

「私大専願にする?何言ってんの、まずは国公立大学目指して頑張れよ!」

という指導をする先生方が多かったりすることも知っています。

学校・学年全体で「国公立大学〇〇〇人合格」という数字をあげることが目標になっている場合もあり、早稲田慶応ならともかく、中堅私大に専願で進学されるよりは、地元の国公立大学の合格者を1人でも多く出したいということなのでしょう。

 

何も私は、

「何が何でも、私大より国公立大学」という信者ではありません。

むしろ、家庭の経済状況が許すのであれば、どんどん首都圏・関西圏の私立大学にチャレンジして「外の空気を一度吸ってくる」方が、地元国立大に進学して、一生地元に住むよりも、人脈や人間の幅を広げる可能性があるのではないかとも思っています。

仮に、最終的に公務員や学校の先生になり、生まれた地元に住むことを希望しているとしても、一度は地元を離れるのは良い経験になると思っています。地元を離れることによってこそ自分の生まれた地元の良さをよく知ることができるのではないかとも思っています。

 

数年前までなら、

「高校の先生は、是非国公立大学志望を貫いて欲しいみたいなんですが・・・」

という生徒・保護者の相談にも

「自分でその私立大学に行ってみたいという気持ちが強くて、(経済状況等の)環境が許すなら、是非チャレンジしてみれば・・・そうすると数学とか理科は赤点取らないくらいには頑張るにしても、できるだけ受験科目の英語・国語・社会に時間かけないとね。私立大学専願で頑張ってね。」

と答えていましたし・・・

 

私立大学専願(私文専願)にするの今はやめた方がよい理由①

最近の大学入試では、「AO入試・推薦入試(公募・指定校)」といった入試形態での入学者が、無視できないほど多くなってきています。

「推薦・AO」入学者の全入学者数に占める割合は、

私立大で2人に1人

公立大で4人に1人

国立大で6人に1人

という大きな割合になっています。

 

特に推薦入試を受けようと思えば、「評定平均」(いわゆる内申書の数字)がいくら以上といった条件があったりします。

 

もし、高校1年とか2年の早い段階で、数学や理科を捨てて、赤点ギリギリの成績になってしまえば、そういった「AO・推薦入試」を受験するチャンスをまるまる捨ててしまうことになります。

 

「AO・推薦入試」の比重が高くなっている今、数学・理科捨てて一般受験での私立大学専願にするという選択は、決してお得な戦略とは思えません。

 

 

一般受験で私立大学専願(私文専願)はやめた方がよい理由② ~指定校推薦の大学以上のランクの大学に一般受験で合格していくのは至難の業!

 

中には、

「うちの学校にも私立大学の指定校推薦の枠があるんだけど、〇〇大学ランクしかないからなあ」

「それなら、指定校推薦なんて考えないで、三教科の受験に絞れば、それより上のランクの大学に入れるんじゃないかと思う・・・」という人もいるかも知れません。

 

ところが、私立大学入試の状況は相当変化しています。

 

大きな理由は「大学の入試定員の厳格化」です。

私立大学は、合格者が全員その大学に進学するわけではありません。滑り止めで受験した生徒などが他の大学に進学するからです。そのため、私立大学はそういった他大学に流れる生徒を見積もって、大目に合格者を出すのです。結果として、その見積もりが甘ければ、定員より多い生徒が大学に実際入学することになってしまいます。ところが、文科省の指導で、「定員より多い入学者がいた場合」私学助成金がカットされることになり、結果として各私立大学は、以前よりも合格者を少なく発表せざるを得なくなっているのです。

 

そしてその結果は、

早慶上智では、2018年入試では前年に比べての合格者数は3,000人超の減、

MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)は8,000人超の減、

関関同立(関西学院・関西・同志社・立命館)も8,600人超の減です。

 

これだけ合格者が絞り込まれた結果、模擬試験ではA判定だったのに・・・という生徒が続出したのが2018年度入試です。この少子化の流れの中で、首都圏の予備校では大学受験の浪人生数が増えたということもうなずけます。

 

結論です。こういった私立大学定員の厳格化の流れの中では、

 

あなたが「この学校に指定校推薦で行っても・・・」と思う私立大学には、一般受験で合格していくことは至難の業です。それが現実です。

 

ましてや、その一つ上のランクの大学に一般受験で合格していく可能性はかなり薄いと思った方がよいです。

 

悪いことは言いません。「指定校推薦」で行ける私立大学がある高校であれば、是非高校1年生時点から、その時その時の定期試験を頑張って、「指定校推薦」の校内選抜を勝ち抜けて行くことを考えて下さい。

 

そのためには、評定平均をしっかり確保していかなければいけませんから、やはり、早い時期から数学・理科捨ててしまうのはやめた方がよいのです。

 

私立大学専願(私文専願)にするのは今はやめた方がよい理由③

中には、

「地元の国立大学に行くくらいなら、首都圏・関西圏の有名私立大学に進学した方が良い」

と思う人もいるかも知れません。

 

国立大学と私立大学の併願合格状況も大きく変わっています。

 

「あなたがもし、思う首都圏・関西圏の有名私立大学」に行きたいと思うなら、そのレベルに合格していけるのは、「最低でも地方帝大かそれに準じるクラス」を受験し合格していく力のある生徒です。それが今の受験状況です。実際、北大・東北大合格でMARCHレベル不合格はゴロゴロいます。

 

「このままの成績だと地元の地方国立大学には一般受験で届かない」成績の生徒が、数学や理科を捨てて、その分の時間を英語・国語・社会の勉強にかけたとしても、合格していけるのは「あなたが思う首都圏・関西圏の有名私立大学」ではありません。残念ですが、そういった生徒が、数学・理科を捨てて一般入試で合格していけるのは、偏差値40台前後からせいぜい頑張って偏差値40台後半の私立大学です。

 

もちろん、偏差値だけが全てではありませんから、そういった大学の中に自分の本気で学びたい学部学科があったり、あの先生のもとで勉強したい、というのがあれば良いです。

 

でも、それにしたって、高1、高2の時に数学理科を含めて、しっかりと評定平均(内申点)を確保していれば、AO入試・推薦入試を利用してもっと有利に志望の私立大学に合格していける可能性が高いと思います。

 

また、多少、数学理科が不得意でも、何とか捨てずに食らいついて、評定平均をクリアすることで、無理だと思っていた地元の地方国立大学にAO入試で合格していった生徒もたくさん知っています。

私立大学専願(私文専願)にするのが良いかもしれない生徒

数学・理科捨てて私立大学専願にした方が良いかもしれない生徒というのもいたりはします。

・そもそも大学進学実績があまりない高校(もちろん指定校推薦とかもない高校)で、偏差値40だろうがFランクだろうが、大学に進学することが一番の目標の人

 

・高校で部活動に時間を取られて、高1の段階ですでに赤点ギリギリの教科があり、これからどう頑張っても推薦・AOの基準を満たすことが難しい人

 

・首都圏や関西圏在住で、近隣の国公立大学はもちろん偏差値が高くて難しく、地方の国公立大学にアパート借りて進学するくらいなら、近隣の自宅から通える私立大学の方が良いと思う人

 

そういう人は、数学・理科捨てて私立大学専願という選択肢が現実的かも知れませんね。

 

以上、数学・理科捨てて私立大学専願(私文専願)にするのは今はやめた方がよい理由をまとめてみましたが、一人一人の置かれている状況(住んでいる場所・家庭の経済状況・通っている高校・志望している大学や学科・現在の成績・・・)によって、自分にとってベターな選択というのがあるはずです。

 

あくまでも「安易に数学や理科を捨てて私立大学専願」というのは一般的に今の大学進学状況を考えると、有利な選択ではないのでは、という参考意見として・・・

 

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