知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

英語民間試験 やはり疑問‼ 英語民間試験の制度はやはり破綻してませんか?

英語民間試験 やはり疑問‼ 英語民間試験の制度はやはり破綻してませんか? 

英語民間試験の導入には、2年位前から注目して、このブログでも随分と「懸念」を表明してきました。

 

度重なる仕組みの変更、情報が探しにくい大学入試英語ポータルサイト、現時点でも未定の項目・・・ある意味もう嫌気がしています。

 

しかし、現時点で私の中でどうしても英語民間試験の大学入試利用について、納得しようにも納得できない疑問があります。

 

文部科学省でも大学入試センターでも良いのですが、教えていただけないかと思い、投稿することにします。

 

従来より、「異なる英語民間試験でどうやって受験者の力を比べることができるのか?」と強く疑問に思ってきました。

 

まずは以下の「大学入試英語ポータルサイトの質疑応答集」をご覧ください。

 

f:id:kasikoi:20190921195023j:plain

大学入試英語ポータルサイト質疑応答集より

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/09/05/1420469_2.pdf

 

これを見ると、おそらく文科省の理論はこうです。というか私にはそうとしか読み取れません。

 

「文科省では、毎年、各試験実施主体に対して、資格・検定試験が安定して適切に実施されてることを確認するために、平均スコアの推移や得点分布の報告を求めます」

(※この辺はひょっとしたら文科省も混同している可能性があります。「得点分布」ではなく「スコア分布」ではないかと思いますが・・・)

 

⇒「もし、各試験・検定試験のスコアとCEFRとの対応関係を見直す必要が生じた場合は、文科省及び大学入試センターは、各試験実施主体にCEFRとの対応関係を適切に見直すように促します」

 

⇒(したがって)「各資格・検定の難易度が上がったり下がったりして不公平な状況が生じるのでは、とか、各試験実施主体が、意図的に難易度を引き下げたりという心配はありません」

 

英検にしてもGTECにしても、各試験の設問ごとの配点がそれぞれ何点なのかは公表されていません。ブラックボックスの中で「素点(それぞれの設問ごとの配点の合計)」と「スコア」の関係は各試験主体が各回ごとに調整することも可能です。

 

したがって、同じ試験主体の試験の今年実施の〇月〇日実施分、△月△日の実施分、次年度の〇月〇日、△月△日実施分は(素点はぶれていても)平均スコアやスコアの分布を「安定した」「適切なもの」にすることは比較的容易なはずです。

 

それを提出させたからといって、各社の試験が平等で公正であることの証明にはなりません。

 

ここで文科省理論にいくつかの疑問を投げかけたいと思います。

 

①各試験主体の提出した平均スコア・分布が仮にそれぞれの試験主体ごとに安定していたとして、それが各社の試験が「公平である」ことの担保になるのでしょうか?

 

もし、A社のスコア分布がCEFR換算で例えばB1の上限に近いところに分布のヤマがあり、B社のスコア分布ではB1下限にヤマがあるといったことが生じたときにはどう判断するのでしょうか?

 

あるいはC社の分布ではC1は全体の2%、B2が10%、D社の分布ではC1が10%、B2が20%といった差異が生じた場合にはどうするのでしょう?

 

はっきり言うとそれが適切で公平かどうかは、「各社から提出された資料だけでは判断できません。」

 

上記の例では一見C社の試験よりもD社の試験の方が「判定が緩い」ようにも思われます。

 

しかしだからといって、どちらかの試験が「適切でない」と判断をすることはできません。「成績の良い生徒がC社の試験よりもD社の試験を選んで受験した可能性」があるからです。

 

「どの試験も公平で平等である」ことを証明するには、「同一の生徒で異なる民間試験をそれぞれ1回受験した生徒で比べる」しかありません。

 

そして、それは各試験実施主体はできないことで、文部科学省・大学入試センターにしかできない検証です。

 

文部科学省はそういった「同一の生徒で異なる民間試験をそれぞれ1回受験した生徒で比べる」作業をし、結果を公表する義務があると思いますがいかがでしょうか?

 

それ以外に、「本当に異なる民間試験で公平に生徒の力を比べられる」ことの証明はできません。

 

一方でそれは、「民間試験によって緩い・厳しい試験があった」ことを実際に証明してしまう可能性もあります。

 

来年の年末ぐらいには、「私は1回はA社のを受験してB1だったけどもう1回はB社の受け手A2だった」「絶対A社の判定の方が緩いから受験するならA社」といった『情報』がネットに出回ることが容易に想像つきます。

 

それを覆すデータを(改ざんせず)作り、公表する、

あるいは本当に「緩い・厳しい」があったことを(黒塗りなしで)公表する正義感と勇気が文部科学省にはありますか?

 ②各資格・検定試験のスコアとCEFRとの対応関係を適切に見直す⁉ できるはずがないのでは?

「もし、各試験・検定試験のスコアとCEFRとの対応関係を見直す必要が生じた場合は、文科省で及び大学入試センターは、各試験実施主体にCEFRとの対応関係を適切に見直すように促します」とのことですが、それは本当に可能なのでしょうか?

 

「適切に見直せ」と文科省または大学入試センターが言うことは、逆に「終わってしまった年度の試験が適切ではなかった」と言っていることと同じです。

 

では、その適切でなかった年度の受検をした人は、どうするのでしょう?「私は適切でない英語民間試験を受検し、不利益を被った」と訴える人もでるでしょう。

 

あってはならないことですが、個別の大学入試で採点に間違いがあった場合には、該当の生徒を救済したり補償したりすることも可能でしょう。

 

英語民間試験で仮に「適切でなかった」場合は、いったいどこの誰が責任を取り、不利益を被った受験生に補償をするのでしょう?その実施主体ですか?

 

「文部科学省が設置した専門家による作業部会において、各試験実施主体のCEFR の関連付けが妥当に行われているかどうかを確認しています。」とのことなので、文科省が責任を負うのですか?

 

大学入試英語成績提供システムの運営に関する協定書も公表されているのは「概要」だけですから、その辺の責任問題はどうなっているのかすら私たちには知ることができません。

 

終わってしまった年度の試験に責任を負うことは実質不可能なのですから、「文科省及び大学入試センターは、各試験実施主体にCEFRとの対応関係を適切に見直すように促す」ことなどできるはずがないのです。

 

さらに、仮に「各試験実施主体にCEFRとの対応関係を適切に見直す」場合、2年ルールを適用すれば、その間に「適切でない民間試験」を受験する人もでてきます。カオスです。

 

それをいとも簡単に「見直しを促します」と書いてしまうことが私には信じられません。

 

今回は「本当に異なる民間試験で生徒の力を判定できるのか」というそもそも論に絞っての私の疑問でしたが、この点だけでも英語民間試験の制度はやはり破綻していると言わざるを得ないと思います。(記述式の共通テストも含め)英語民間試験の大学入試活用制度は中止(最悪でも延期)すべきだと思います。

 

文部科学省でも大学入試センターでも良いのですが、私が持っている疑問について教えていただけないものかと思い書いてみました。