【小学ゼロ年生案】って何? 朝日・FNN・読売の報道 ネットには反対のコメント続出&文科省の苦悩
文科省が小学ゼロ年生という言葉が昨日5/20から、突如各社の報道で出だしました。微妙に報道のニュアンスが異なっているようなので、小学ゼロ年生案とはどんなものか、各社の報道を読み比べてみます。
【小学ゼロ年生案】って何? テレビ朝日の報道
時系列でいうと、まず5/20の20:18にテレビ朝日が小学ゼロ年生案について配信しました。
小学1年の4月から8月を小学ゼロ年生として学校生活を送ってもらい、9月から1年生にする案も検討されていることが分かりました。6年をかけて9月入学に移行していくということです
この報道時点では、
6年をかけて9月入学に移行
ということは、先日の文科省が提示した案(1か月ずつ入学時期をずらす案⇒下記参照)を念頭に、幼稚園・保育園は3月卒園で、その後9月に小学1年生になる間までのつなぎで「小学ゼロ年生」という制度を作るのだなと理解していました。
【小学ゼロ年生案】って何? FNNの報道
時系列で5/20の深夜12:00にFNNが小学ゼロ年生案について報じています。
導入が検討されている「9月入学」について、文部科学省が検討する複数の移行案の1つに、「小学ゼロ年生」を導入し、小学校を6.5年間とする案があることがわかった。
この案では、直近の例で説明すると、2014年4月2日から2015年4月1日生まれの現在の年長クラスに加え、現在の年中クラスのうち、2015年4月2日から6月1日生まれの2カ月分の子どもが新入生の対象となる。
この子どもたちは、2021年3月に幼稚園などを卒園したあと、4月から8月にかけて、新たな学年となる「ゼロ年生」として学校生活を送り、9月から1年生になるという。
この案では、児童の数はあわせて14カ月分となり、これを6年かけて移行させることが想定されているが、小学校はこれまでの6年から、6.5年に延びることになる。
この時点で、私の中ではこの小学ゼロ年生案って『何だ?』という思いになりました。
というのは、つい先日の報道では、文科省が次官級会議に提示したのは以下の2つでした。
【1案】2021年度小学校入学児童のみ誕生日の幅が17か月
●2021年9月小学校入学
⇒2014年(平成26年)4月2日から2015年(平成27年)9月1日生まれの(17か月分)の人
2022年9月小学校入学
●⇒2015年(平成27年)9月2日から2016年(平成28年)9月1日生まれの(12か月分)の人
以降同様
【2案】2021年度小学校入学児童から5年間にわたって誕生日の幅を13か月とする。(1か月ずつずらしていく案)
●2021年9月小学校入学するのは
⇒2014年(平成26年)4月2日から2015年(平成27年)5月1日生まれの(13か月分)の人
●2022年9月小学校入学するのは
⇒2015年(平成27年)5月2日から2016年(平成28年)6月1日生まれの(13か月分)の人
●2023年9月小学校入学するのは
⇒2016年(平成28年)6月2日から2017年(平成29年)7月1日生まれの(13か月分)の人
●2024年9月小学校入学するのは
⇒2017年(平成29年)7月2日から2018年(平成30年)8月1日生まれの(13か月分)の人
●2025年9月小学校入学するのは
⇒2018年(平成30年)8月2日から2019年(令和元年)9月1日生まれの(13か月分)の人
●2026年9月小学校入学するのは
⇒2019年(令和元年)9月2日から2020年(令和2年)9月1日生まれの(12か月分)の人
FNNの報道の
「直近の例で説明すると、2014年4月2日から2015年4月1日生まれの現在の年長クラスに加え、現在の年中クラスのうち、2015年4月2日から6月1日生まれの2カ月分の子どもが新入生の対象」
という部分は、上記の2案とはまた違った「第3案」ということなのでしょうか?
【小学ゼロ年生案】って何? 読売の報道
朝日、FNNに続いて、5/21の8:39に読売新聞が下記のように小学ゼロ年生案について報じています。
9月入学を実施する場合、就学開始時期が現在よりも半年遅れになる。文科省では、ゼロ年生を導入すれば、卒園の時期が現行と同じ3月のままでも、比較的円滑に9月入学に移行できるとみている。
今回の案を来年に9月入学・始業とともに導入する場合、2021年3月に幼稚園などを卒園し、4月から8月の5か月間はゼロ年生として学校生活を送る。小学校期間を計6・5年間とする。
この読売の報道では、また朝日の報道に近いものになっている気がします。
いずれにしても、各社の報道を総合すると、今検討中の9月入学を実施するにあたっては、3月保育園・幼稚園卒園の子供たちが9月入学までの期間を、小学校でゼロ学年として受け入れていくことも考えなっくてはいけないという案なのだと思います。
【小学ゼロ年生案】って何? 5/24朝日新聞報道追記
5/24 8:00 朝日新聞デジタルの報道だと、「小学ゼロ年生案」がもう少しはっきりしてきました。
文科省は官邸や他省庁に、
①21年秋に入学する小1のみ、4月2日~翌年9月1日生まれを合わせた誕生月17カ月分の学年とする「一斉実施案」と、
②小1を4月2日~翌5月1日生まれまでの誕生月13カ月分の学年とし、誕生月の期間を5年がかりで1カ月分ずつずらしていき、26年から12カ月分に戻す「段階的実施案」を提示。
新たに③4月2日~翌4月1日生まれまでの誕生月が12カ月の学年を維持した上で、4~8月に「ゼロ年生」期間を設ける案を加えた。
この③案と言うのが「小学ゼロ年生案」の正体だったのですね。
この③の「小学校ゼロ年生案」だと、①②案で懸念されていた「保育園・幼稚園で今まで一緒に通っていた子供たちが小学校で別の学年になっていまうといういわゆる分断問題」は解消されるということなのでしょうか?
【小学ゼロ年生案】って何?
この「小学ゼロ年生」という言葉は、急に出てきた感があるかもしれません。
しかし、元々9月入学を本当に実施しようとすれば、
ア)幼稚園・保育園の3月卒園を遅らせて、9月入学直前の8月まで幼稚園・保育園に通ってもらう
ィ)今回のように、幼稚園・保育園を3月に卒園した子供を9月の1年生開始まで小学校で面倒を見る
ウ)3月に保育園・幼稚園を卒園した後は9月の小学校入学まで長期の休みを取ってもらい家庭で面倒を見る
この3つしか選択肢はありません。
このうち、ウ)は現実的選択ではありませんから、結局ア)ィ)の選択となります。
ア)の場合、ただでさえ幼稚園・保育園に入れないという待機が問題になっているのに、受け入れるキャパがあるとは思えません。
残ったのはィ)のように、幼稚園・保育園を3月に卒園した子供を9月の1年生開始まで小学校で面倒を見るという対応策しかありません。
それを今回文科省が「小学ゼロ年生」という言葉を使ったために、一挙にネットでも話題になったにすぎないのだと思っています。
【小学ゼロ年生案】って何?ネットには反対のコメント続出
この「小学ゼロ年生」という言葉について、ネット上の反応としては、反対のコメントが並んでいます。
・馬鹿じゃないか
・思い付きでやるな
・年中さんも期間も短く、年長さん期間もなくいきなり4月から小学生⁇ 意味がわかりません。もう九月入学お願いだからやめてください‼
・今まで何年も一緒に保育園で過ごしてきたクラスのお友達と一緒に卒園できず、上の学年に放り込まれるというのはあまりにもひどい案だと思います。本当に、子供の事考えての9月入学ですか?当事者の親としてこの案には絶対に反対です
自分も子育ては経験しましたから、これから小学校に入学していく子供を抱える保護者の皆さんが反対の意見となるのはよく分かる気がします。
【小学ゼロ年生案】って何? 文科省の苦悩
そもそも、この9月入学の話が出だしたのは、
コロナの学校休校で、
「まともに学習していない状態でだ入試を迎えるのは不安だ」
「部活動、学校行事など、失われた学校生活を取り戻すためにも8月卒業、9月入学にして欲しい」
といった声を高校3年生が上げたところから始まります。
また、今後コロナの第2波、第3波が冬場にやってきた場合に、全国一斉の「大学入学共通テスト」が本当にできるのだろうかという懸念もあります。
文科省としては、そういった現場の高校生の「9月入学賛成」の声と、「これ以上混乱させないで欲しい」という声の板挟みで、非常に苦悩していることがよく分かります。
そういった中「保育園・幼稚園も8月卒園は(人材的に)無理であろうから、小学ゼロ年生という制度も考えている」ということだろうと思います。
5/21の参議院文教委員会で水岡議員の9月入学についての質問に萩生田文科大臣は以下のように答えています。
この状況の中で何か月間も学びの機会を奪われた子供たちが、残された時間の中で本当にしっかりとした(学びの)保証ができるのかという検証を文科省としては責任を持ってやらなきゃならないと思います。
確かに夏休みを削ったり土曜日に授業を行うことによってもしかしたら授業時間の積み上げというのはできるのかもしれません。しかし、例えば土曜日には自分が志を持って学んでいる学び事ですとか、サッカースクールですとか野球ですとかそういうことで自分が一生懸命取り組んでいることが奪われるわけですから、今後学校が再開した時にそういったことに知恵を巡らせながら子供たちの3月までの卒業時期までに、本当に学びの保証が、小学校6年生も中学3年生も高校3年もできるのかどうか、それが受験に対応できるようなしっかりした教育内容を提供できるのかどうか、修学旅行や体育祭などの行事がどんどんなくなることで良いのかどうか。子供たちはインターハイもない総合文化祭もない中で本当に悶々としていると思います。昨日は甲子園も中止になりました。
私の思いはあくまで今いる子供たちの学びの保証をどうできるかであって、確かに9月入学に移行するとなればこれは社会全体に大きなを影響を与えますから、それはそれでしっかりと制度設計をしなきゃいけない。
この相反する2つのことが同時に進んでいますので、やや現場に混乱を与えていると思いますが、いずれにしても慎重にしっかりと対応していかなければいけないと思っていますので、そこは軽々な対応ではなく深く考えを巡らせて頑張ってまいりたいと思っています。
今日(5/21)の答弁では、この「小学ゼロ年生案」についての言及はありませんでしたが、本当に文科省としては苦悩をしながら考えているのだと思います。
ここまで「9月入学」に賛成の意見、反対の意見が出ている中で、いずれの結論を出すにしても残された時間はあまりありません。
残念ですが、どういう結論を出すにしても、「不満に思う人」は必ず出ます。全員が100%満足する案はないと思います。
文科省、あるいは与党、政府、野党、みんなで知恵を絞って、
「その制度で不満に思う人・不利益を被る人を少なく、またその不満・不利益を最小にするか」を考えてもらえればと思っています。
以上、【小学ゼロ年生案】って何? 朝日・FNN・読売の報道とネットの反応と文科省の苦悩について書き留めておきます。