共通テスト実施要項2021年度~生じる疑問点と問題点~
大学入学共通テストの2021年度(令和3年度)の実施要項が6/30発表になりました。
ツッコミどころ満載ですが、とりあえずまとめてみます。
●共通テスト出願期間
2020年9月28日(月)~10月8日(木)
●共通テスト日程
第1日程・・・2021年1/16(土)、1/17(日)47都道府県
第2日程・・・2021年1/30(土)、1/31(日)47都道府県
特例追試・・・2021年2/13(土)、2/14(日)全国で2か所
●第2日程を受けられる人
現役生で(コロナで)『学業の遅れ』のため第2日程を受験することが適当であると在学する学校長に認められた者
第1日程を疾病、負傷等でやむを得ない事情で受験できなかった者
第1日程を雪雪や地震等による災害その他の事情で、実施できず又は完了できなかった場合には、実施できなかった試験分について再試験として第2日程で受験
●特例追試を受けられる人
第2日程を疾病、負傷等でやむを得ない事情で受験できなかった者
●共通テストの平均点等の発表はいつ?
第1日程の中間発表は1/20(水)予定
第2日程の中間発表は2/3(水)予定
最終発表は2/18(木)予定
●共通テストの成績提供(各大学に成績提供)はいつ?
共通テストの成績提供は2/8(月)以降
ただし、特例追試については2/18(木)以降
●共通テストの得点調整は?
第1日程、第2日程それぞれで
①「日本史B」「世界史B」「地理B」の間
②「現代社会」「倫理」「政治経済」の間
③「物理」「化学」「生物」「地学」の間
原則として20点以上の平均点の差が生じた時実施。
(受験者が1万人未満の科目は得点調整の対象外)
第1日程と第2日程の間では得点調整を行わない。
●特例追試の問題と時間割はセンター試験と同一⁉
特例追試の問題は「センター試験」形式
数学1Aは60分
英語は発音、アクセント、語句整序などを単独で問う問題も出題(センター試験と同じということですね)
英語の筆記配点は200点、リスニング配点50点(これもセンター試験と同一)
以上が、6/30に大学入試センターから発表された共通テスト実施要項2021年度の抜粋です.
2021年度共通テスト実施要項をみて、生じる疑問点と問題点
①そもそも、第1日程と第2日程で難易度をそろえるということが可能なのか?
いったい誰がそれを担保するのか?
難易度が異なる可能性のあるもので、どうやって公正な合否判定を下せるのか?
②さらに、特例追試に至っては、(人数が少ないことが予想されるとはいえ)時間・形式・配点(英語)まで異なります。それでどうやって同じ土俵で合否判定を下せるというのか?
③第2日程を選択するにあたって、「学校長が認めた場合」ということは、生徒が仮に第2日程を希望していても、校長が認めないという事態は生じえないか?
あるいは、校長、学校現場がどちらかの日程を選択するように恣意的に指導する可能性はないのか?
③共通テストの問題が、「試行問題しかない状態」では、「第2日程を選択して、第1日程の問題をみてから受験した方が有利では」などと不要なことを考える精神的な負担を生徒に与えることにならないか?
④第2日程の中間発表が2/3。第2日程の試験の結果を受けて、各予備校等のいわゆるABCD判定やボーダーがでそろうのもそのころだとすると、生徒の国公立大学への出願は「データが見えない状態で」「各高校等の進路指導の時間も不十分なままで」行われることにならないか?
今回のコロナの影響で、「勉強時間が足りない」という思いの受験生の気持ちはよく分かります。しかし、たった、2週間後に第2日程を実施するという今回の対応は、勉強不足を補うには不十分で、「休校の影響に配慮しました」というアリバイ作りにしか思えません。
コロナ禍で、どういう制度にしたとしても万人が納得する方式を設計するのは非常に難しかったと、ある意味では文科省の方々には同情の気持ちもあります。
しかし、入試で最も大切な「公平・公正さ」が損なわれることになる「第1日程・第2日程・特例追試(しかも特例追試はセンター形式)」という今回の制度は、最も選択すべきでなかった実施方式だと思います。
「もうこれ以上、決まったことをひっくり返して混乱させないで欲しい」
そういった気持ちも自分の中にはあります。
文科省も、「実施要項が発表になってからの変更」は流石にメンツが保てないでしょう。
共通テスト実施要項2021年度~生じる疑問点と問題点~そして提案
そこで、高校生の指導にも携わっている私の提案は以下です。
大学サイドが
「日程の都合もあるし、特例追試は公平・公正に合否判定に使えません。したがって、受験生は基本的に第1日程で受験するように強く要望します。」
といった声明を出す。
結果、実質共通テスト第1日程でほとんどの人が受験するようにさせる(第2日程は第1日程を病気等で受験できなかった人の追試扱いに実質戻す)
「遅れを気にする生徒」には大変申し訳ない気持ちです。しかし、そうすることで少なくても公正さは保たれるのではないでしょうか?
共通テスト形式より、センター試験形式が望ましい、という個人的な思いはこの際封印します。
最低限、「公正に(基本同一の)試験を実施し、合格者の選抜が行われること」を強く望みたいと思います。