【英語民間試験・記述式見送り】賠償金5.8億円を大学入試センター支払い~負担を受験生に負わせてはならない~
2021/6/29朝日デジタル
(英語民間試験・記述式の共通テスト)活用見送りに伴って各団体のシステムが不要になったためセンターが損失を補償したという。
さらにセンターは、記述式の採点を委託していた1団体に対し、記述式の導入見送りに伴って契約を破棄したことから、同団体の準備費用分を賠償した。
計5億8900万円は約10億円あったセンターの積立金から払ったという。
まあ、英語民間試験・記述式の導入見送りで、こういった賠償責任が出てくることは当然の帰結です。
同日の朝日新聞記事では
文科省は「業者と契約を結んだ主体はセンターであり、国はセンターに補填しない。センターが営業努力の中で支払った」としている。
センターは「積立金から支払うように文科省から方針を示され、それに基づいて払った」という。
となっています。
センター積み立て金は過去の受験生が払ったもの
しかし、大学入試センターの積立金は過去の受験生が支払ったもの。間接的に過去の受験生が、この【英語民間試験・記述式見送り】賠償金5.8億円を支払ったと同じことです。
頼んでもない、英語民間試験・記述式の導入で、混乱させられた上に、こういった負担を間接的とはいえ負わせられた過去の受験生は納得できないのではないでしょうか。
負担は今後の受験生が負うことにならないか?【英語民間試験・記述式見送り】賠償金5.8億円
さらに、目減りした大学入試センター積立金を、どこかで帳尻合わせしようとするのではないかという懸念があります。
すでに、令和4年(来春)実施の共通テスト受験料は
3教科以上で18,000円、2教科以下で12,000と据え置きが決まっています。
これが、ほとぼりが冷めた令和5年以降に様々な理由をつけて値上げをしてくるようであれば、結果的に上記の5.8億円は将来の受験生が負担することになります。
負担は今後の受験生が負うかもしれない流れは始まっているのでは?
2021/4/12日経電子版
この【英語民間試験・記述式見送り】賠償金が最終的に受験生が負う可能性は、上記の記事からも推察されます。
受験生の成績を提供してもらう際に大学が支払う成績提供手数料は、2021年1月の第1回共通テストでは1件当たり750円だった。センターは3月29日付で、22年は1200円、23年は1500円に引き上げると大学側に文書で通知。「共通テストを安定的・継続的に実施するため、自立的な財政基盤を確保することが必要」と説明した。
センターは国から運営費交付金を受け取っておらず、受験生が払う検定料(3教科以上の受験は1万8千円、2教科以下は1万2千円)が収入の約9割を占める。成績提供手数料を値上げすることで赤字を回避し、検定料を据え置くとみられるが、大学側が個別入試の受験料に上乗せする可能性もある。
センターが設置した運営の在り方を検討するワーキングチームは「現行の検定料の設定が適切かどうかについて検討が必要」と指摘している。
記事にもあるように、少子化の流れの中で受験生が減れば、センターの収支が悪化するのは間違いないと思います。
しかし、今回の【英語民間試験・記述式見送り】賠償金5.8億円を大学入試センターが支払ったということで、それを最終的に受験生が受験料値上げという形で負う時期が早まり、負担増の額も大きくなるのではないかと懸念します。
やはり、本来今回の英語民間試験・記述式導入については、文科省にも責任はあるのですから、(誰かが負担を負わねばならないのだとしたら)国が責任もって負うべきだと思います。
また、それを主導してきた歴代文科省大臣は(金銭面ではなく)責任を負うべきだし、そして何よりも「無理を承知で」英語民間試験・記述式を導入すべきと主張してきた人たちは、今後の入試のあり方を議論する場に登場させるべきではないと思います。
※私立大学で共通テストの成績だけで合否を決める方式の場合、750円のコスト(成績提供費用)で、数万円の受験料を徴収していたのはあまりにもひどいのではないかという議論もありますが、それはまた別の機会に考えたいと思います。
【英語民間試験・記述式見送り】賠償金5.8億円を大学入試センター支払い~負担を受験生に負わせてはならない~でした。