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#英検の値上げに抗議します について考える~英検受験料推移と誰が受験料を負担すべきなのか~
2021年11月19日 東京新聞記事より
実用英語技能検定(英検)の検定料値上がりが続き、受験者の経済的負担が増しているとして、東京都内に住む高校生が、日本英語検定協会に検定料の値下げを求めるインターネット署名を続けている。検定料は2021年度も新型コロナウイルス禍での試験会場の確保などを理由に値上げされており「経済的な格差が学びの格差につながってはいけない」と賛同を募っている。
英検の受験料値上げ推移
英検値上げの推移に関しては、今年3月に朝日新聞EduAが詳しく報じています。
入試への影響は? 英検が3年連続で検定料値上げ「コロナで会場費高騰」|コロナ時代の英語学習|朝日新聞EduA
#英検の値上げに抗議します
これに対して、高校生を中心とした人たちが、 #英検の値上げに抗議します というハッシュタグで英検受験料の引き下げの署名を集めだしたというわけです。
確かに、彼らが主張しているように、実用英語検定、通称英検は大学受験あるいは高校受験においての重要性は大きくなってきており、受験料の負担増は少なからぬ影響を与えています。
大学入学共通テストでの英検利用は見送られたものの、一部の一般入試、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜では、出願条件として英検の合格証明やスコアが求められるケースが増えています。
具体的には、
出願資格 (出願するための条件)
特典加算 (取得した資格をもとに評価される)
加点 (決まった点数が加えられる)
判定優遇、合否参考 (当落線上に複数の受験生がいた場合に優先される)
試験免除 (英語試験が免除される)
の5つの優遇制度が取り入れられました。
また、高校受験において学力検査点や調査書点へ加点される制度もあり、わずかな点差が命取りになる受験生にとって欠かせない評価になります。
こういった声を高校生を中心に上げたことに対しては敬意を表したいと思います。
そもそも英検の受験料は誰が負担するべきなのかという根本的な問題
しかし、ここで「そもそも英検の受験料は誰が負担すべきなのか」という根本的な問題に立ち返ってみたいと思います。
以前のように
「自分の英語の力がどのくらいか試してみたい」
「英検合格を目指して学習することで自分の英語学習の励みにしたい」
といったことが英検受験の目的なのであれば、英検受験料の負担は個々人(家庭)が負担することに異論はないと思います。
英検を受験したくなければしなければいいのですから。
ところが、上記のように英検のスコアが、高校入試や大学入試で有利に働く場合があったり、そもそも英検○○級が出願条件となっている入試形態がある現状では、中学校や高校の現場では半ば強制的に英検を受験を推奨するところも出てきます。
そもそも、英語4技能が必要という掛け声の中、英語民間試験の共通テスト利用(必須化)は記述式採点の公平性や地域格差などの問題で一旦取りやめとなりました。
どうしても、英語4技能の力を測って合格者を選抜したいという高校あるいは大学があるのであれば、個別の高校あるいは大学の入試でそれを実施するべきなのではないでしょうか。
それを自分たち(選抜する大学や高校)では行わず、英検など英語民間試験を運営する会社に丸投げするのであれば、その英語民間試験の受験料は、選抜する主体=大学(あるいは高校)がある程度負担すべきなのではないでしょうか。
なお、例えば大学サイドで
「英語民間試験を受験しなくても受験できる方式もあるのだから、別に英語民間試験を強制しているわけではない」
というならそれは詭弁です。
英語民間試験を受験している人が有利に働く受験方式である以上、「合格したい」と思う人にとってはそれは「必須」と同じだからです。
それはまた、
何度も英検など英語民間試験を受験して高スコアを取っていく「余裕のある家庭の生徒」と「英語民間試験を受験する余裕のない家庭の生徒」の格差を大学が容認することにも他なりません。
英語民間試験の利用を各大学に押し付けようとする動き
もう一つ、気になる動きとしては、英語民間試験の利用を各個別の大学入試に押し付けようとする動きもあります。
2021年7月30日(金)新聞赤旗より
文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」が「提言」(8日)をまとめました。「大学入学共通テスト」での英語民間試験の活用と国語・数学の記述式問題導入は「困難である」とし、各大学が実施する個別試験で活用などを進めるべき
今度の「提言」は、英語民間試験の活用が、多くの大学・学部にとって「現実的な選択肢」だとし、各大学が個別入試で活用する積極的取り組みを促進するよう文科省に求めています。
https://www.mext.go.jp/content/20210719-mxt_daigakuc02-000016687_14.pdf
こうなってくれば、ますます英検などの英語民間試験を受験せざるを得なくなっていきます。
各大学(あるいは高校)においては、それぞれのアドミッションポリシーに照らし合わせ、本当に英語4技能を測る入試が必要なのであれば、個別の大学で実施すべきだし、
百歩譲って、「うちの大学では必要だけれども大学ではそういった入試を行うことができないので英語民間試験を受験してもらいたい」のであれば、大学受験生が英検などの民間試験を受験する費用の一部を大学側が負担すべきだと考えます。
そうでなければ勇気をもって「うちの大学は英語民間試験は入学者選抜に用いません」というはっきりとした姿勢を打ち出す矜持を見せて欲しいと思います。
繰り返しになりますが今回の #英検の値上げに抗議します と勇気をもって声を上げた高校生たちには敬意を表したいと思います。
今度は、私たち大人が、「誰が英検の受験料を負担すべきなのか」について考え、そして文科省・大学サイドに対して声を上げる番なのではないでしょうか。
※なお、英検の受験料が準会場(高校会場)で安くなっていますが、結果的に各高校サイドが手弁当に近い形で運営し、さらに「外部の生徒の受け入れ」も要請されたりして先生方の負担が大きくなっているという問題についてはまた改めて考えたいと思います。
以上 #英検値上げに抗議します について考える~英検受験料推移と誰が受験料を負担すべきなのか~でした