都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の問題点~東京だけの問題ではない!~TBSラジオ 森本毅郎の Stand-by より書き起こし
2022/5/24 TBSラジオ 森本毅郎の Stand-by で都立高校入試への英語スピーキングテストの導入の問題点取り上げられています。
中村友美ディレクターと森本さんのやり取り、大津先生、中村先生のコメント、
都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の問題点についてよく分かる放送だったので、以下記憶にとどめるために一部抜粋して書き起こしておきます。
中村
3年前の2019年にニュースになった大学入学共通テストに英語の民間試験が導入されそうになった問題覚えているでしょうか。
高校生からも反対の声って言うのが集まって結局見送りになった。
実は今東京都立高校の入試で似たような問題がとりだたされています。今年11月に中学3年生を対象に英語を話す力を試すというスピーキングテストを行ってその結果を調査書、内申書に反映させるということなんですね。
これについて様々な問題があるとして中止を求めるという署名活動も行われているんですね。
署名の呼びかけ人のお一人で慶應義塾大学名誉教授大津由紀雄さんのお話です。
大津
このスピーキングテストはベネッセと共同開発をしているものですけれども、ベネッセ自体が実施しているGTECというテストがあります。何種類かありますけれどもその中のGTECコアと呼ばれるものとそっくりで、受験者に対する指示、問題の構成と問題数、問題の傾向、準備時間と解答、採点基準、などまさに2つはそっくりということで、東京都の中にある公立中学校の中にはGTECコアを実施しているところと実施していないところというものがあるわけで、これは公正さに欠けるということに他ならないと思います。
森本
えー、元々ベネッセがやっているテストとそっくりの問題が出るということですか?
中村
そうなんです。ベネッセがやっているのがGTECコアなんですけれども、それと東京都がやろうとしているスピーキングテスト、それぞれWEB上でサンプルと言うのが公開されているので比較することができるんですが、
(中略)
本当にまあ流用されたといわれてもおかしくない状態なんですよね。
中学校としてこのGTECコアを導入しているところもあるので、じゃあそこに通っている生徒さんが圧倒的にもう有利になってしまいます。
また、スピーキングテストの点数の試験の反映のされ方って言うのも問題が指摘されています。元々内申書と言うのは1教科につき5段階評価で最高評価の5を取ると点数としてはおよそ23点に換算されるんですけれども、英語だけはこの23点にスピーキングテストの20点が上積みされて満点だと43点
森本
ずいぶん大きなことになるわけですね。
中村
他の教科が23点なのに、英語だけ43点ってどういうことなのって声も出ています。
まだ問題があります。東京都内の中学高校で英語教師をしていた田中真美さんはさらにスピーキングテストの点数の算出方法について問題を指摘しています。
田中
最終的にはスコアというのは100点満点で出す。100点満点をさらに6段階に分けて、4点刻みで内申点とする、ということなんですね。私は100点私は80点だったという人が全く同じ内申点20点をもらうわけです。
ところが79点だった人は80点に1点届かなかったんだけれども内申点は16点になります。内申点を4点上げるというのは国数英理社の教科で内申5段階評価の4を5にするとか3を4にするとか評価を1上げるのと同等の点数なんですよ。その4点がたった1回のスピーキングテストのひょっとしたら1点差の瀬戸際で左右されかねないということなんですよね。
(中略)
中村
しかもなんですけれども、もし設定されてる受験日に受験ができなかった場合は、後日行われる筆記試験の方の英語の得点からスピーキングテストの仮の点数を算出して加算する。推定でペーパーテストからスピーキングテストの点数を出すっていうふうに・・・
森本
無茶苦茶だなあ、それは。
中村
それってスピーキングテストやる意味とは、ってなっちゃいますよね。
またさらにこのテストの結果が出るのは1月中旬なんですけども、実は推薦試験にはちょっとギリギリ間に合わないんじゃないかなというスケジュールになっていて、一般入試は2月なんでぎりぎり間に合いそうなんですけれど、そこで内申点が変わって、じゃあ志望校も変えないといけないとなると保護者の混乱というのも生まれてきます。
中村
まだ問題があります。
森本
まだあるか…
中村
慶應大学の大津名誉教授、
この試験で果たして英語をしゃべる力が身につくのかという本質的な問題を指摘しています。
大津
スピーキングのテストとうはいうもののタブレットに向かって話すという形をとります。
これは普段我々が話をするという形態とはかなり違っているわけで、ある中学生の話を聞いたんですけれどもその時に、コミュニケーションとは人とやるものだし、普段の授業でもこんなやり方で練習したことはない、ということで率直な気持ちを語ってくれました。
で、こういうテストとそれに対する練習だけをしていくと、話す力がつくということよりも相手の思いや意見に耳を傾けてそれに対する自分の反応を伝えるという行動コミュニケーションの本来の姿からどんどんかけ離れていってしまうという危惧がとても強くあります。
森本
これ結局試験用にやるってだけの話になっちゃうわけですよね。
中村
それでは本当の英語のコミュニケーション力っていうのは身につかないんじゃないかということですよね。
さらに、採点においてなんですけれども仮にテストの結果を振り返ろうと思っても、採点される方がフィリピンの方でして、その方たちがどういう専門家でどういう訓練を受けてきた人なのかが明らかにされていないということや、またテストの結果が全体のスコアしか返ってこなくて、個別の設問の点数って返ってこないんで、何が間違ってたのかもよく分からない。
(中略)
また東京都のローカルの話題ということもあってまだ問題が広がっていないということも指摘されているんですけれども、大津さんや田中さんは、東京都でこういう試験が導入されるということは今後地方でも広がっていく可能性があるよってこともおっしゃっています。
森本
これなんで東京都はわざわざこんな問題の多いことを実施しようとしているのかその真意がよく分かりませんけれども、東京がこれやれば必ず全国に広がっていく可能性がありますよね。ですからそういう意味でも影響力が非常に大きいんでね、もう一回東京都はきちんと考え直した方がいいと思いますね。
当サイトでも以前この東京都のスピーキングテストの問題点について触れていましたが、今回の放送は問題点を非常によくまとめたものだったと感じました。
そして同時に
「スピーキングテストの導入は決して東京都だけの問題ではない」
「スピーキングテストを今回の問題のある形で入試に導入することは反対だ」
という意思表明をしておきたいと思います。
※地方で子供たちの学習に携わっていますが、英語のスピーキング力を伸ばすこと、そして場合によっては個別の高校あるいは大学がしかるべき方法で英語のスピーキング力を測って入学者を選抜するということ自体に反対する立場ではありません。
5/27追記
東京都は英語スピーキングテストについての発表をしています。
注目は欠席者の「仮の点数」の算定方法が公表されたことです。
英語の筆記試験の結果からスピーキングテストの点数を算定しようということですから、無茶苦茶を無理やり通そうとしているとしか思えません。