知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

【ネスカフェインスタントコーヒーの戦略】を2枚のお買い物メモによる調査が変えた~インスタントからゴールドブレンド、アンバサダーそしてバリスタi へ~

【ネスカフェインスタントコーヒーの戦略】を2枚のお買い物メモによる調査が変えた~インスタントからゴールドブレンド、アンバサダーそしてバリスタi へ~

生徒といわゆるペプシチャレンジの話の英文を読み、数十年前に学んだ【ネスカフェインスタントコーヒーのマーケテイング戦略】のことを思い出したので、忘れないうちに残しておきます。

 

【ネスカフェインスタントコーヒーの戦略】2枚のお買い物メモによる調査が変えたとはどういうことなのでしょう?

 

以下、恩師でもある故田内幸一先生の「マーケテイング」という本から敬意をこめて引用・抜粋いたします。 

 


2枚のお買い物メモによる調査がネスカフェインスタントコーヒの戦略を変えた経緯はこうです。

 

1937年スイスでインスタントコーヒーが発売される

最初はネスカフェインスタントコーヒーの売り上げが伸びない

インスタントコーヒーの使用経験者になぜ現在使用していないかを直接質問すると大部分が「味が悪いからと答えた。」

普通のコーヒーとネスカフェインスタントコーヒーを同じようなカップに入れてどれがネスカフェか当てさせてみると誰も当てられない

つまり普通のコーヒーとネスカフェインスタントコーヒーの味に大差はないということ

ではなぜ消費者は「味が悪いから」という理由でネスカフェインスタントコーヒーを使わなかったのか???

 

この疑問を解決するためにネスカフェが行った調査がモチベーション・リサーチ技法でした。

 

「モチベーション・リサーチ」とは、消費者の購買行動における、潜在的欲求を明らかにする調査手法のことです

 

ネスカフェが行ったモチベーション・リサーチ調査は以下のようなものでした。

 

100人の主婦を招き、50人ずつにそれぞれ以下のような「お買い物メモ1」と「お買い物メモ2」を渡す。

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ネスカフェモチベーション調査「お買い物メモ1と2」

そして「このようなお買い物メモを使う主婦の性格を描いてくれ」と依頼したのです。

 

2つのお買い物メモの違いは「(コーヒー豆の)マクスウェルコーヒー」か「ネスカフェインスタントコーヒー」かという点だけです。

 

結果は驚くようなものでした。

 

普通の豆コーヒーが入っている買い物メモ1に対する反応は一口で言えば大変好ましいものでした。

「そもそも買い物メモを用意するのは計画的だ」

「桃の缶詰が入っているのは、おいしいものを夫や子供に食べさせようとする温かい心の持ち主だ」

といったものでいた。

 

一方、ネスカフェインスタントコーヒーが入っているお買い物メモ2の主婦像は全く異なるものでした。

「インスタントコーヒー、桃の缶詰と手をかけずに飲食できるものが入っているのは怠けものである」

 

ネスカフェインスタントコーヒーを買わないようにさせていたのは、味が悪いからではない。

 

真の理由は

「自分自身としても、そして他人からも、怠けものと思われたくない」

からだということがはっきりしたのです。

 

もしネス社が、「味が悪いからインスタントコーヒーを買わない」という消費者の回答をまともに受けて、味の改良に努力していたら、今日の姿はなかったでしょう。

 

ネスカフェインスタントコーヒーが継続使用されない本当の理由が、その怠けものイメージにあることを発見して、このイメージを除くことに努めたから成功していったのです。

 

※以上日経文庫「マーケテイング」田内幸一著 より引用・抜粋

 


その後日本でも「違いが分かる男のネスカフェゴールドブレンド」「上質を知る人のゴールドブレンド」というCM(年配ならわかる、ダバダ~♬ってやつですね)を出すなど、「ブランドイメージの高級感」を消費者に訴えていきました。

 

さらにネスレ日本は2013年に「脱インスタントコーヒー宣言」。日本インスタントコーヒー協会などの業界団体からも脱会しました。

 

これはネスレが開発した新製法(挽き豆包みフリーズドライ製法)にあり、これを「インスタントコーヒー」ではなく「レギュラーソリュブルコーヒー」と新たに表記することに対して、業界団体が難色を示したからだそうです。

 

とにかく「インスタントコーヒー」とう言葉が生み出すイメージをなくしていきたいということだったのでしょう。

 

さらに、ネスレは「ネスカフェバリスタ」「ネスカフェアンバサダー」と戦略を進化させてきています。

 

90年代に入ると、スターバックスなどのエスプレッソマシーンを用いたカフェが登場。普通のコーヒーだけでなく、エスプレッソ、ラテなどを楽しむ若い人たちも増えていきます。


これに対応する形で、ネスカフェバリスタでは、ゴールドブレンドのカートリッジをセットし、水を入れるだけで、ラテなどのメニューも簡単に作ることができるようになりました。

 

さらに、「ネスカフェアンバサダー」の導入。

いわゆる「フリーミアモデル」です。

フリーミアムモデルとは、例えばプリンターの値段は押さえて、それでも後日継続的に購入してくれるトナーやインクで利益を出す戦略です。

 

さらにさらに「バリスタi」では、いつどれだけどんなコーヒーが飲まれているかのデータまで収集・・・・とにかくネスカフェの戦略は昔も今も奥が深く、興味深いですね。

 

以上 、【ネスカフェインスタントコーヒーの戦略】を2枚のお買い物メモによる調査が変えたでした。