知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生にも支援と文科省方針~でも経過措置だってさ~

国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生にも支援と文科省

この問題をずっと追いかけていきましたが、どうやら現在授業料減免になっている生徒にも予算措置がなされる方向のようです。2019/12/18の朝日新聞記事の引用です。

 

文部科学省は、来年度から始める国立大などの学費負担を減らす新制度に絡み、授業料の減免措置を受けていて新制度で対象から外れたり、支援額が減ったりする学生約1万9千人に対し、引き続き支援を受けられるようにする方針を固めた。この措置のため、来年度予算案に約53億円を盛り込む。

 

 新制度では、約264億円を投入して低所得の家庭向けに授業料減免や給付型奨学金を集中させる。「両親と本人、中学生」の一家4人のモデル世帯の場合、年収380万円未満が支援の対象となる。収入ごとに減免額は3段階あり、年収270万円未満の住民税非課税世帯では、国公立大で授業料約54万円、入学金約28万円が全額免除となる。一方、年収380万円以上は対象外。そのため、いま減免措置を受けている学生のうち約1万人は支援が打ち切られ、約9千人は支援額が減るとされていた。


 今回、国が国立大学に支給する「運営費交付金」から約53億円を充てることで、対象外になる1万9千人全員が卒業まで従来通りの支援を受けられるようにする。留学生や成績優秀者など経済的理由とは関係なく減免を受けていた学部生についても同様の措置をとる。このため予算約10億円をあてる。

 運営費交付金の総額は約1兆1070億円となり、19年度比で約99億円増える。大学ごとの毎年の改革状況を評価して配分する枠は約850億円で、19年度から約150億円増える。

国立大学費減らす新制度、対象外学生に支援措置 文科省:朝日新聞デジタル

 

どうやら、現在大学の授業料が減免になっている大学生は、卒業まで従来通りの支援が受けられることになりそうです。

 

この記事でよく分からないのが、「来年以降入学の学生が、従来までであれば授業料減免対象になっていた生徒が同じような基準で支援を受けられるかどうか?」という点です。

現在授業料減免の学生にも支援と文科省方針~でも経過措置だってさ~

この「来年以降入学の学生が、従来までであれば授業料減免対象になっていた生徒が同じような基準で支援を受けられるかどうか?」についてもう少し踏み込んだ記事が下記の共同通信の記事です。以下共同通信引用。

 

政府は2019/12/18、在学中の国立大学部生については現在の授業料減免措置を維持する方針を固めた。約1万9千人が対象外となる見込みだったが、急な変更による学業への悪影響を防ぐため、特例として激変緩和の経過措置を取る。

国立大在学中の授業料減免維持 1万9千人に特例、激変緩和措置(共同通信) - Yahoo!ニュース

 

今回の文科省の支援策が「現に授業料減免になっている生徒」だけを対象にするという時限的な経過措置で、2020年度以降大学に入学する学生に対して何ら言及がされていません。

 

例えば世帯年収400万とか500万の世帯で、現在在学中の学生が来年から授業料減免の対象外になるという最悪の事態は脱したかもしれません。

 

しかし今後入学していく世帯年収400万とか500万の世帯の学生は、救われないことになります。

 

今後の予算審議でこの点も是非取り上げていただき、今後の入学生も同様の授業料減免対象になるように、できれば、私立大学を含めて大学授業料が中間層も含めて安くなるような恒久的な制度改革を望みたいと思います。

 

その後、2019/12/23の萩生田文科大臣が「端境期なのでご理解を」と発言

 

『従来なら支援を受けられたのに対象外となる新入生が出ることについて、萩生田光一文科相は23日、「先輩はこういう家庭環境でこうだったのに、俺はという不満はあるかもしれない」とした上で、そうした学生が出ることに対し、「制度の端境期なので、ぜひご理解を」などと述べた。』朝日新聞デジタルより

 

詳しくは↓↓↓

kasikoi.hatenablog.com

 

 


以下はこれまでの経緯です。

国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生半数以上に影響⁉ 

 以前のブログで来年4月から導入される低所得者層を対象とした「大学等就学支援法」で、今まで大学独自の裁量で授業料免除・半額免除になっていた人で、来年以降授業料の負担が増加する見通しであることが文部科学省の調査で分かったということについて書きました。現在授業料免除・減額の東大生の2人に1人は来年支援額が減少する可能性があるということも分かりました。

 

kasikoi.hatenablog.com

 

今日はそのさらに続報です。

さらに他の大学の具体的な人数も分かってきました。

赤旗電子版2019/10/19の記事によると

日本共産党山添参議院事務所の問い合わせに対して、18大学が回答。

 

それによると、支援が減る学生の割合は

横浜国立大学60%、千葉大学59%、信州大学55%、名古屋大学54%など、16大学で軒並み約50~60%の学生が支援を減らされます。

 

支援が減る人数では、九州大学715人、信州大学550人、北海道大学498人、千葉大学467人などとなっています。 

赤旗電子版2019/10/19国立大授業料免除支援外し

 国立大授業料減免 支援外し/50~60%の学生に影響/山添議員が調査

 

これだけ多くの「現在大学授業料が免除または減額されている学生」が、来年は、授業料減免されなくなるかもしれないということです

 

いや、それだけではありません。

来年度以降大学に入学する学生で、「今年までであれば、授業料減免措置を受けられる可能性のあった学生」が、来年度から始まる「大学等就学支援法」(俗に言う大学無償化法案⁉)の制度からはみ出せば、授業料減免の恩恵に預かれないということなのです。

現在授業料免除・半額免除の人が「大学無償化法」で逆に負担増に!ってどういうこと?

どういうことなのか簡単にまとめます。

★「大学等就学支援法」(俗に言う大学無償化法案)が2019/5成立し、世帯年収380万円未満の人は、年収に応じて、大学等の入学金・授業料が支援されるだけではなく、返済不要の給付型奨学金がもらえることになった。(支援額は下記参照)

 

★実は現状でも、各大学ごとの制度で、授業料が全額免除・半額免除の学生はいる。下記東北大学の例では年収400万、500万以上でも授業料が減免されている例がある。
 

★現状授業料が全額免除・半額免除の学生で、今回の「大学等就学支援法」の枠からはみ出て、支援の対象から外れる人が出るのでは?という文教委員会での質問に対しての文科大臣の答弁

 

「各大学がそれぞれの基準で授業料減免を行っているので文部科学省が一律に何かは言えない」

「新制度で対象にならない、既存の支援を受けている学生も生じうる」

「夏までに精査していきたい」

 

★「今年授業料の減免措置の対象者」でも「大学等就学支援法」の対象から外れる世帯年収の学生(例えば年収400万とか500万の場合)は、来年は授業料の減免措置が受けられるかどうかが不明!⇒ここまでが夏までの状況

 

★9/20共同通信の報道によると、「低所得世帯を対象とした高等教育の修学支援制度で、国立大に通う学部生のうち約1万9千人は授業料の負担が増加する見通しであることが20日、文部科学省の調査で分かった。」

 

★文科省は、個別の大学でどれだけの人数が支援額が減少するか公表できないとしていましたが、今回宮本徹議員の調査によると、東大生で現行の授業料免除制度の支援対象人数は586名、新制度の導入により、支援額が減少する人数は308名(うち、支援を受けられなくなる人数は180名)。現1〜3年生でみても248名が減免打切りもしくは縮小ということが分かった。
 
日本共産党山添参議院事務所の問い合わせに対して、18大学が回答。

支援が減る学生の割合は

横浜国立大学60%、千葉大学59%、信州大学55%、名古屋大学54%など、16大学で軒並み約50~60%の学生。

支援が減る人数では、九州大学715人、信州大学550人、北海道大学498人、千葉大学467人など。 

 

★ 2019/12/9東大からの発表
国立大学における授業料減免は、運営費交付金によって学部及び大学院を通じてこれまで実施されてきましたが、新制度の導入に伴い、授業料減免に充てている財源が影響を受ける可能性が指摘されています。そして、現行の減免措置が維持できなくなることが危惧されています。現在、国立大学協会を通じて文部科学大臣を始め関係各方面に対し、新制度においても現行と同程度の支援を継続できるよう予算確保を要望していますが、予算が確保されるかは現時点では未定です。「高等教育の修学支援新制度」の実施後における本学の方針について | 東京大学

 

★ 文部科学省は、来年度から始める国立大などの学費負担を減らす新制度に絡み、授業料の減免措置を受けていて新制度で対象から外れたり、支援額が減ったりする学生約1万9千人に対し、引き続き支援を受けられるようにする方針を固めた。この措置のため、来年度予算案に約53億円を盛り込む。(朝日新聞デジタル)2019/12/18
 
★新制度の導入に伴い、減免措置を受けていた現役の国立大生のうち約1万9千人が支援を打ち切られたり減らされたりする懸念があった。文科省は来年度予算案に53億円を盛り込み、現在支援を受けている学生が卒業するまでは、従来通りの支援が受けられるようにする。ただ、新入生は対象になっていない。
萩生田光一文科相は23日、「先輩はこういう家庭環境でこうだったのに、俺はという不満はあるかもしれない」とした上で、そうした学生が出ることに対し、「制度の端境期なので、ぜひご理解を」などと述べた。
↑イマココ New(2019/12/23)
 

この問題をもう少し詳しく掘り下げてみます。

 

2019年5月10日「大学等就学支援法」が衆議院で可決成立しました。

www.nikkei.com

 

これで2020年4月から、世帯収入に応じて、大学等の入学金・授業料が支援されるだけではなく、返済不要の給付型奨学金がもらえることになります。

 

支援の金額等は以下のようになっています。

 

高等教育の無償化制度での支援額

  国公立 私立
  授業料 入学金 授業料 入学金
大学 54万円 28万円 70万円 26万円
短期大学 39万円 17万円 62万円 25万円
高専 23万円 8万円 70万円 13万円
専門学校 17万円 7万円 59万円 16万円

 

給付型奨学金(いずれも年額)

  自宅生 自宅外生
国公立 35万円 80万円
私立 46万円 91万円

 

上記いずれも世帯年収によって3段階で支援する

①住民税非課税世帯(年収270万円未満) 全額支援
②年収270万円~300万円未満 非課税世帯の3分の2を支援
③年収300万円~380万円未満 非課税世帯の3分の1を支援

 

これは、すでに在学生の人、2浪までの浪人生、そして合格後2年の間までの高卒認定生も対象となります。

 

大学無償化 従来授業料が免除されたり半額免除等の在学生はどうなるのかという問題

従来までも、国公立大学中心に、一定の水準の世帯収入の場合、授業料が全額免除されたり半額免除になっている学生がいます。

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東北大学HPより免除申請者の家計状況と免除結果の目安

引用元

http://www2.he.tohoku.ac.jp/menjo/files/date_tution_waiver.pdf

 

上記は東北大学の場合ですが、結構世帯年収が400万、500万くらいでも授業料全額免除になっていることが分かります。(この辺は大学によってだいぶ変わるらしいです)

 

他の大学の授業料免除の目安については上記tweetからのリンクが参考になります。

 

問題点は、大学等就学支援法が成立したことで、今回支援の対象にならない世帯年収400万、500万といった従来であれば授業料が全額免除とか半額免除になっていた人たちが、弾き飛ばされてしまう恐れはないのかということでした。

 

蓮舫議員のtweetでもそういった懸念が実際にあるという問題点が指摘されています。柴山文部科学大臣も「対象とならない学生も生じうる」と認めています。

 

 

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やはり、今回の大学等就学支援法が成立したことで、従来は授業料免除・半額免除の対象だった人で逆に大きな負担を強いられる人がでるということです。

 

今回の大学無償化法案で、支援の対象からはみ出る年収400万円、500万円の世帯で、現在授業料免除あるいは半額免除になっている人たちは、4月以降「自分たちは授業料どうなるんだ?」という心配で一杯のはずです。

 

現在支援減免を受けている学生が制度の対象外になるという懸念に対して、柴山大臣も国会で「対象とならない学生も生じうる」とお答えになっていますから、不安に思うのも当然です。

 

さらに、財務省歳出改革部会の資料を見ると、不安はさらに大きくなります。

 

歳出改革部会(令和元年5月16日開催)資料

 

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財務省歳出改革部会(令和元年5月16日開催)資料より

(参考) 財務省 ⽂教・科学技術 資料2 令和元年5⽉16⽇

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseier190516/02.pdf

 

歳出改革部会という位ですから、「歳出をどう改革」するかという会議だと思います。

 

上記の資料の一番下の灰色の三角形部分=授業料減免

これを財務省は、点線の赤(1)(2)にする、あるいはしたいということだったんですね。

 

この、従来の授業料減免対象の学生で「来年授業料減免の対象とならない」可能性がある人が1万9000人もいるということです。

 

今回の大学無償化法で、従来大学進学をあきらめていた層が大学等に進学できる可能性はあると思います。

 

しかし、一方で世帯年収400万~600万円程度の世帯年収の人にとってはメリットどころか、来年以降勉強を続けられるかどうかの瀬戸際でもあります。

 

長年、高校生とも一緒に勉強してきていますし、自分自身でも子供を2人県外に進学させています。年収400万、500万くらいの世帯の層の学生が、自宅を離れて進学すると本当に大変です。

 

親の収入の面で大学進学をあきらめざるを得ない人たちからすれば、大学に進学できるだけ恵まれているという批判も甘んじて受けないといけないとは思います。

 

でも、授業料を減免してもらい、不足分は有利子の奨学金に頼り、数百万の借金をかかえてようやく卒業に至るということも珍しいことではありません。

 

本当は、大学等の授業料全般を見直してもらうことが希望ではありますが、少なくても現在授業料減免の対象になっている学生が、来年4月以降、制度から押し出されて授業料減免の対象外になることは避けて欲しいと切に願います。

 

 

※参考 2019/5/22の衆議院文教委員会で城井議員質問に対する柴山大臣の答弁。

 

「各大学がそれぞれの基準で授業料減免を行っているので文部科学省が一律に何かは言えない」

「新制度で対象にならない、既存の支援を受けている学生も生じうる」

「夏までに精査していきたい」

 

そして「夏まで精査」した結果が、

共同通信の報道「低所得世帯を対象とした高等教育の修学支援制度で、国立大に通う学部生のうち約1万9千人は授業料の負担が増加する見通しであることが20日、文部科学省の調査で分かった。」ということなのでしょう。

 

このまま何も政府・文科省が手を打たなければ、現在授業料の減免措置を受けている学生1万9000人が、来年以降授業料負担が増し、最悪の場合学生を続けられなくなる人が出る可能性があります。文科省も、「各大学がそれぞれの基準で行っていることだから・・・」という姿勢ではなく、予算の裏付けをしたうえで「現在既存の授業料減免措置を受けている学生が、不利益を被らないように各大学へ通達します」といった宣言をしてもらえることを再度強く願います。

 

そして、それだけではなく、「来年以降入学する学生も、少なくても今年までと同程度の基準の学生が授業料減免の対象になる」ことを強く願いたいと思います。

 

以上、国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生半数以上に影響⁉