国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?
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国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生半数以上に影響⁉
以前のブログで、来年4月から導入される低所得者層を対象とした「大学等就学支援法」で、今まで大学独自の裁量で授業料免除・半額免除になっていた人で、来年以降授業料の負担が増加する見通しであることが文部科学省の調査で分かったということについて書きました。現在授業料免除・減額の東大生の2人に1人は来年支援額が減少する可能性があるということも分かりました。
今日はそのさらに続報です。
さらに他の大学の具体的な人数も分かってきました。
赤旗電子版2019/10/19の記事によると
日本共産党山添参議院事務所の問い合わせに対して、18大学が回答。
それによると、支援が減る学生の割合は
横浜国立大学60%、千葉大学59%、信州大学55%、名古屋大学54%など、16大学で軒並み約50~60%の学生が支援を減らされます。
支援が減る人数では、九州大学715人、信州大学550人、北海道大学498人、千葉大学467人などとなっています。
国立大授業料減免 支援外し/50~60%の学生に影響/山添議員が調査
これだけ多くの「現在大学授業料が免除または減額されている学生」が、来年は、授業料減免されなくなるかもしれないということです。
いや、それだけではありません。
来年度以降大学に入学する学生で、「今年までであれば、授業料減免措置を受けられる可能性のあった学生」が、来年度から始まる「大学等就学支援法」(俗に言う大学無償化法案⁉)の制度からはみ出せば、授業料減免の恩恵に預かれないということなのです。
現在授業料免除・半額免除の人が「大学無償化法」で逆に負担増に!ってどういうこと?
どういうことなのか簡単にまとめます。
★現状授業料が全額免除・半額免除の学生で、今回の「大学等就学支援法」の枠からはみ出て、支援の対象から外れる人が出るのでは?という文教委員会での質問に対しての文科大臣の答弁
「各大学がそれぞれの基準で授業料減免を行っているので文部科学省が一律に何かは言えない」
「新制度で対象にならない、既存の支援を受けている学生も生じうる」
「夏までに精査していきたい」
支援が減る学生の割合は
横浜国立大学60%、千葉大学59%、信州大学55%、名古屋大学54%など、16大学で軒並み約50~60%の学生。
支援が減る人数では、九州大学715人、信州大学550人、北海道大学498人、千葉大学467人など。
国立大学における授業料減免は、運営費交付金によって学部及び大学院を通じてこれまで実施されてきましたが、新制度の導入に伴い、授業料減免に充てている財源が影響を受ける可能性が指摘されています。そして、現行の減免措置が維持できなくなることが危惧されています。現在、国立大学協会を通じて文部科学大臣を始め関係各方面に対し、新制度においても現行と同程度の支援を継続できるよう予算確保を要望していますが、予算が確保されるかは現時点では未定です。「高等教育の修学支援新制度」の実施後における本学の方針について | 東京大学
以下、以前のブログをリライトしてこの問題をもう少し詳しく掘り下げてみます。
2019年5月10日「大学等就学支援法」が衆議院で可決成立しました。
これで2020年4月から、世帯収入に応じて、大学等の入学金・授業料が支援されるだけではなく、返済不要の給付型奨学金がもらえることになります。
支援の金額等は以下のようになっています。
高等教育の無償化制度での支援額
国公立 | 私立 | |||
授業料 | 入学金 | 授業料 | 入学金 | |
大学 | 54万円 | 28万円 | 70万円 | 26万円 |
短期大学 | 39万円 | 17万円 | 62万円 | 25万円 |
高専 | 23万円 | 8万円 | 70万円 | 13万円 |
専門学校 | 17万円 | 7万円 | 59万円 | 16万円 |
給付型奨学金(いずれも年額)
自宅生 | 自宅外生 | |
国公立 | 35万円 | 80万円 |
私立 | 46万円 | 91万円 |
上記いずれも世帯年収によって3段階で支援する
①住民税非課税世帯(年収270万円未満) | 全額支援 |
②年収270万円~300万円未満 | 非課税世帯の3分の2を支援 |
③年収300万円~380万円未満 | 非課税世帯の3分の1を支援 |
これは、すでに在学生の人、2浪までの浪人生、そして合格後2年の間までの高卒認定生も対象となります。
大学無償化 従来授業料が免除されたり半額免除等の在学生はどうなるのかという問題
従来までも、国公立大学中心に、一定の水準の世帯収入の場合、授業料が全額免除されたり半額免除になっている学生がいます。
引用元
http://www2.he.tohoku.ac.jp/menjo/files/date_tution_waiver.pdf
上記は東北大学の場合ですが、結構世帯年収が400万、500万くらいでも授業料全額免除になっていることが分かります。(この辺は大学によってだいぶ変わるらしいです)
低所得者の大学等の授業料の負担軽減の法律が成立しました。「無償」の基準(非課税世帯、家族4人で270万)が多くの国公立大学の全額免除基準より狭いため、いま授業料が免除されている人が全額負担になるケースがでます。対策が必要です。各国公立大学授業料免除一覧→ https://t.co/Oshz7CIUzg
— 宮本徹 (@miyamototooru) May 10, 2019
他の大学の授業料免除の目安については上記tweetからのリンクが参考になります。
問題点は、大学等就学支援法が成立したことで、今回支援の対象にならない世帯年収400万、500万といった従来であれば授業料が全額免除とか半額免除になっていた人たちが、弾き飛ばされてしまう恐れはないのかということでした。
蓮舫議員のtweetでもそういった懸念が実際にあるという問題点が指摘されています。柴山文部科学大臣も「対象とならない学生も生じうる」と認めています。
やはり、今回の大学等就学支援法が成立したことで、従来は授業料免除・半額免除の対象だった人で逆に大きな負担を強いられる人がでるということです。
今回の大学無償化法案で、支援の対象からはみ出る年収400万円、500万円の世帯で、現在授業料免除あるいは半額免除になっている人たちは、4月以降「自分たちは授業料どうなるんだ?」という心配で一杯のはずです。
現在支援減免を受けている学生が制度の対象外になるという懸念に対して、柴山大臣も国会で「対象とならない学生も生じうる」とお答えになっていますから、不安に思うのも当然です。
さらに、財務省歳出改革部会の資料を見ると、不安はさらに大きくなります。
歳出改革部会(令和元年5月16日開催)資料
(参考) 財務省 ⽂教・科学技術 資料2 令和元年5⽉16⽇
歳出改革部会という位ですから、「歳出をどう改革」するかという会議だと思います。
上記の資料の一番下の灰色の三角形部分=授業料減免
これを財務省は、点線の赤(1)(2)にする、あるいはしたいということだったんですね。
この、従来の授業料減免対象の学生で「来年授業料減免の対象とならない」可能性がある人が1万9000人もいるということです。
今回の大学無償化法で、従来大学進学をあきらめていた層が大学等に進学できる可能性はあると思います。
しかし、一方で世帯年収400万~600万円程度の世帯年収の人にとってはメリットどころか、来年以降勉強を続けられるかどうかの瀬戸際でもあります。
長年、高校生とも一緒に勉強してきていますし、自分自身でも子供を2人県外に進学させています。年収400万、500万くらいの世帯の層の学生が、自宅を離れて進学すると本当に大変です。
親の収入の面で大学進学をあきらめざるを得ない人たちからすれば、大学に進学できるだけ恵まれているという批判も甘んじて受けないといけないとは思います。
でも、授業料を減免してもらい、不足分は有利子の奨学金に頼り、数百万の借金をかかえてようやく卒業に至るということも珍しいことではありません。
本当は、大学等の授業料全般を見直してもらうことが希望ではありますが、少なくても現在授業料減免の対象になっている学生が、来年4月以降、制度から押し出されて授業料減免の対象外になることは避けて欲しいと切に願います。
※参考 2019/5/22の衆議院文教委員会で城井議員質問に対する柴山大臣の答弁。
「各大学がそれぞれの基準で授業料減免を行っているので文部科学省が一律に何かは言えない」
「新制度で対象にならない、既存の支援を受けている学生も生じうる」
「夏までに精査していきたい」
そして「夏まで精査」した結果が、
共同通信の報道「低所得世帯を対象とした高等教育の修学支援制度で、国立大に通う学部生のうち約1万9千人は授業料の負担が増加する見通しであることが20日、文部科学省の調査で分かった。」ということなのでしょう。
このまま何も政府・文科省が手を打たなければ、現在授業料の減免措置を受けている学生1万9000人が、来年以降授業料負担が増し、最悪の場合学生を続けられなくなる人が出る可能性があります。文科省も、「各大学がそれぞれの基準で行っていることだから・・・」という姿勢ではなく、予算の裏付けをしたうえで「現在既存の授業料減免措置を受けている学生が、不利益を被らないように各大学へ通達します」といった宣言をしてもらえることを再度強く願います。
そして、それだけではなく、「来年以降入学する学生も、少なくても今年までと同程度の基準の学生が授業料減免の対象になる」ことを強く願いたいと思います。
以上、国立大授業料免除・減額の学生、来年はどうなる?現在授業料減免の学生半数以上に影響⁉