ESAT-J (東京都中学校英語スピーキングテスト) ブリティッシュ・カウンシルにベネッセから変更で何が変わって何が問題点として変わらないのか?
様々な問題点も指摘された ESAT-J (東京都中学校英語スピーキングテスト)
この度、ベネッセに代わって次期事業者にブリティッシュ・カウンシルが選ばれたことが発表になりました。
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2023/files/release20230713_01/besshi.pdf
ブリティッシュ・カウンシルとは
ブリティッシュ・カウンシルとは、1934年設立と歴史のある英国の公的な国際文化交流機関で、文化芸術、教育、英語を通じて、英国とその他の国の人々の間につながりをつくり、理解と信頼を育みながら、平和と繁栄を築くための支援を行っています。
また、
IELTS(アイエルツ)という、世界最大級の受験者数を誇る英語運用能力評価試験を行っています。
ESAT-J ブリティッシュ・カウンシルに変更で何が変わるのか
東京都内在住の生徒・保護者にとっては、
ESAT-J の次期事業者がブリティッシュ・カウンシルに代わることで何が変わるのかが気になるところだと思います。
まずは「中学校英語スピーキングテスト(事業者)募集要項」を確認してみることにします。
本要項における用語の定義は、以下のとおりです。
(前段略)
カ) ESAT - J: English Speaking Achievement Test for Junior High School Students
中学校英語スピーキングテストのうち、中学校第3学年を対象とするもの
キ ESAT-J Pre 1: 中学校英語スピーキングテストのうち、中学校第1学年を対象とする
もの
ク )ESAT-J Pre 2: 中学校英語スピーキングテストのうち、中学校第2学年を対象とするもの
ケ )プレテス ト: 令和6年度以降の ESAT-J の実施に向け、出題内容・実施方法等を確認するために令和5年度に中学校第2学年を対象として実施する英語スピーキングテスト
(1p)
事業者は、「4 本事業応募者に求める運営体制及びスピーキングテスト実施要件等」を満たすスピーキングテストを実施します。令和5年度から、生徒の学習意欲の向上や、教師による指導改善を図る目的で、ESAT-J Pre 1 及び ESAT-J Pre 2 を実施・運営します。
ESAT-JPre 1 は第1学年全生徒、ESAT-J Pre 2 は、第2学年全生徒を対象とします。さらに、令和6年度から、ESAT-J を実施します。ただし、出題内容・実施方法等を確認するため、令和5年度内に、第2学年生徒を対象にプレテストを実施します。なお、プレテストは ESAT-J Pre2 を兼ねるものとします。
エ 実施日程等
以下を踏まえ、事業者はスピーキングテスト実施日程を東京都教育委員会と協議の上、決定することとします。
(ア)ESAT-J
中学校の教育課程や進路指導の日程、都立高等学校入学者選抜を受検する中学生の負
担や、スピーキングテスト実施から結果提供までの採点期間等を考慮し、原則として毎年度、11 月の第4土曜日から 12 月の第2日曜日までの期間における週休日又は祝日とします。
実施日は、原則として1日とし、同時間帯に一斉に実施します。
なお、ESAT-J 当日に、インフルエンザ等の学校感染症の罹患や公共交通機関の遅れ
などの理由で受験できなかった受験者のために、12 月中旬頃に予備日を設定し、試験を実施します。また、障害特性等の理由により受験できない生徒のために、体験受験日を設定します。
(イ)ESAT-J Pre 1 及び ESAT-J Pre 2
事業者は、各学年の学習状況を鑑み、毎年度1月から3月までの期間で実施します。
実施日は、各中学校が区市町村教育委員会との調整に基づき、上記期間内において設定し、複数日の設定も可能とします。事業者による予備日の対応は、原則として不要とします。
(7p)
これを見ると、令和5年度のESAT-J(今の中3が令和6年度の都立高校入試に使うもの)までは今まで通りベネッセが事業者で、
令和5年度(令和6年の1月から3月に実施)の ESAT-J Pre 1(現在の中1生が受験)とESAT-Jプレテスト(現在の中2生が受験)からブリティッシュ・カウンシルが事業者に変更となることが分かります。
令和6年度のESAT-J 本番(現在の中2生が対象)も11月から12月に実施で12月中旬に予備日が設定されることになります。
4 本事業応募者に求める運営体制及びスピーキングテスト実施要件等
また、社会情勢や学校の状況の変化、技術革新等により、より効果的で安価な費用で実施可能となった場合は、事業者は東京都教育委員会に提案し、協議の上、内容の変更を行います。ただし、ESAT-J の内容の変更を行う場合は、原則として、変更する年度の前々年度には変更する内容を東京都教育委員会と協議の上、確定します。
(p3)
(3)スピーキングテスト基本的事項
ア 出題企画
事業者は、以下の要件を満たすスピーキングテスト問題案を作成し、東京都教育委員会
が設置する中学校英語スピーキングテスト問題検討委員会(最大年5回)において検討し、東京都教育委員会の決定により出題します。なお、中学校英語スピーキングテスト問題検討委員会の委員構成は、有識者や東京都教育委員会の職員等の予定です。
また、出題企画の検討に当たっては、東京都教育委員会が令和4年度までに実施している「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」の問題構成等を併せて参考にすることとします。当面の間、令和4年度までに実施した ESAT-J と同様の出題構成とすることを原則とします。
(5p)
出題企画は令和4年度までに実施された問題構成等を参考にし、「当面の間」令和4年度までに実施されたESAT-J と同様の出題構成とする、とあります。
「当面の間」とはいつまでのことかは不明ですが、変更がある場合には前々年度までに確定するとありますから、少なくとも現在の中2は昨年までと同様の出題構成ということになります。
また、現在の中1生も、来年3月までに変更が確定していなければ現在と同じ出題構成となりますが、今後何らかの発表があるのか注視が必要です。
ESAT-J ブリティッシュ・カウンシルに変更で何が変わって何が問題点として変わらないのか?
(ア)事業者は、受験者の能力を正しく測ることのできる、出題方針に沿った採点基準を作成します。
(イ)事業者は、公平な採点を行うために必要な採点者を必要な人数確保することとします。
(ウ)事業者は、大学の学位を取得し且つ英語教授法の資格をもつなど、高度な英語力と英語教育に関する専門性を有する者に、採点に関する研修を受講させ、トレーニングを受けた上で採点を行います。
(エ)事業者は、各解答音声について、複数の採点者で採点を行うとともに、採点結果を点検する体制を確保します。
(オ)採点結果は IRT による等化処理を行い、経年変化を見ることを可能とするとともに、ESAT-J においては本試日と予備日の結果の等化を可能とするものとします。
ベネッセの時は海外での採点で、果たしてどういう人たちが採点をしているのかがある意味ブラックボックスでした。
今回ESAT-J 事業者がブリティッシュ・カウンシルになって、採点は「どこで」「誰が」行うのかが上記の募集要項からだとよく分かりません。
ブリティッシュ・カウンシルだから大丈夫だろうとも思いますが、そういった採点に関する情報も透明に公開してくれなければ今までの問題点は解決されないのではないかと思います。
ウ 採点結果及び音声データ等の提供
(ア)事業者は、受験者の「話すこと」の力の向上に資することを目的とし、採点結果及び学習アドバイス等の結果帳票を受験者に対して提供し、受験者が ESAT-J において解答した音声データについては希望者に対して提供します。結果帳票については、受験者の了承を得た上で、受験者の在籍する中学校を通じて返却することも可能とします。
なお、音声データの提供に当たっては、個人情報の観点から、受験者本人以外の解答音声を消去するものとします。
(9p)
音声データの開示で気になるのは個人情報の観点から、受験者本人以外の解答音声を消去するという部分です。
ベネッセの時も、「同時に録音されていたであろう他人の音声」を消去しての開示だったと思います。
逆に言うと、今回ブリティッシュ・カウンシルに変更になっても、
「他人の声が一緒に録音されてしまう」可能性があるということの示唆でもあります。
この点は気になります。
⑨ 事業者は、試験監督等の人員の募集に当たっては、公教育を担う業務にふさわしい表現を用いることとします。
(10p)
ベネッセの時、
◆未経験の方 ◆WワークOK ◆履歴書不要 などという文言で試験監督を募集して批判を浴びていたのが記憶に新しいところです。
上記の募集要項は、そういった試験監督の募集方法に釘を刺すものなのでしょうがなんだか笑ってしまいました。
② 実施会場及び教室の割当
事業者は、申込みがあった受験者について、各実施会場に割り当てます。実施会場
の割当に当たっては、受験者の移動時間は原則として在籍する中学校から概ね 40 分
以内とするなど、移動時の利便性に十分配慮することとします。
③ 本人確認
事業者は、受験票には受験者の顔写真を貼付し、スピーキングテスト当日に確認を
行うなど、受験者が本人であることを確認できる仕組みを整えることとします。
(11p)
ベネッセの時は、試験会場まで2時間かかったというのようなツイッターでの書き込みもあったように記憶しています。それが今回は概ね40分以内という文言になったのは改善された点でしょうか。
また、「顔写真をベネッセに登録するのか!」という点も問題視されましたが、今回も顔写真は必要なようです。
問題は、その顔写真データあるいは生徒の住所その他の個人情報が「東京都教育委員会」内にとどまるのか、それともそのデータそのものが ブリティッシュ・カウンシルに渡ることになるのか、あるいはそのデータは本当に目的外の使用されることはないのかということだとも思います。
そういった点も今後注視が必要だと思います。
(キ)事業者は、ESAT-J において、本事業に従事する者及び同居親族等に ESAT-J を受験する者がいないことを確認した上で、東京都教育委員会に報告します。
(ク)事業者は、スピーキングテストの結果や受験者が解答した音声データについて、ESAT-J については実施から4年間、ESAT-J Pre 1 及び ESAT-J Pre 2 については受験者が中学校を卒業するまでの期間、保存するものとし、(ア)から(ウ)に基づき、適切に管理するものとします。
(13p)
(エ)周囲の受験者の解答により、集中が妨げられることがないように、事業者は受験環境を整備するものとします。ESAT-J では、東京都教育委員会と協議の上、受験教室の配置や受験教室内の受験者の座席配置に配慮するものとします。
(3p)
上記で気になるのは「本事業に従事する者」に試験監督が含まれるのであれば、今回のベネッセのように「本人の申告」のみに頼るのでは限界がある気がします。
最後の「周囲の受験者の解答により、集中が妨げられることがないよう」
の部分は、試験会場の座席の近さや音声録音機器の性能を含めて、他人の声が録音されたり、あるいは他人の声で気が散るといったことのなり改善がきちんとなされることを期待します。
なお、今回の募集要項では「午前・午後の二部制」についての可否についての言及はないように思います。
午前午後の二部制実施は
「問題漏洩の危険性」「午後受験者が無駄に待たされた」といった問題点がありました。
その辺の改善も望みたいと思います。
受験をする生徒さんたちは、
基本的に少なくてもここ数年は昨年度のESAT-J と大きな変更はないですから、その辺は心配しなくてもよいと思います。
また、これはブリティッシュ・カウンシルサイドの問題ではありませんが、
そのスピーキングテストの採点結果を都立高校入試に使うことの可否、
もし使うのであれば、受験しなかった生徒との間での「逆転現象」が生じる可能性
そういったものを今後議論していくことが必要だと思います。
以上、ESAT-J ブリティッシュ・カウンシルにベネッセから変更で何が変わって何が問題点として変わらないのか?についてメモ的に残しておきたいと思います。