知の泉

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低所得世帯の高3と中3に大学受験・模試費用を補助へというニュースをうけて雑感

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低所得世帯の高3と中3に大学受験・模試費用を補助へというニュースをうけて雑感

以下読売新聞オンライン2023/10/22より転載

こども家庭庁が、所得が一定以下のひとり親や低所得世帯の高校3年生と中学3年生を対象に、大学受験や模擬試験にかかる費用の補助を始めることがわかった。家庭の経済状況にかかわらず、進学の機会を確保するのが狙いで、開始は2024年度の見通し

 児童扶養手当を受け取っているひとり親世帯や、住民税非課税世帯の18歳以下の子どもは、全国で260万人に上る。このうち補助対象になるのは高校3年生と中学3年生で、受験することなどが条件となる。

 高校3年生には、大学入学共通テストや大学の受験料などとして計約5万円を補助する。中学3年生に対しては、模試を受けるために必要な費用を助成することにしている。 

高校入試模擬試験受験料は年間どのくらいかかるか?

例えば埼玉県で中3の9割が受験しているという北辰模試の場合

1回の受験料が4730円で年間8回(2023年度の場合)実施されていますから

全部受験すれば38240円の負担となります。

 

その他、東京都のVもぎの場合1回の受験料4600円~5400円

神奈川県全県模試の場合1回の受験料5060円などとなっています。

 

これは確かに保護者にしてみれば大きな負担です。

 

大学入試模擬試験受験料は年間どのくらいかかるか?

例えば

河合塾の全統共通テスト模試(ICプレーヤー利用)・・・公開会場受験で8600円(学校内受験の場合6400円)

河合塾全統記述模試・・・公開会場受験で7400円、(学校内受験の場合5300円)

河合塾特定大模試(東大、京大など)・・・公開会場受験で8770円、(学校内受験の場合7700円)

 

もし、共通テスト模試年間3回、記述模試3回プレ共通テスト模試、特定大模試1回を受験すれば、公開会場受験なら年間65370円かかることになります。

 

これは確かに大きな負担です。

大学入試受験料はどのくらいかかるか?

・共通テスト(3教科以上)・・・18000円

・国公立二次試験(前後期それぞれ)・・・17000円

・私立大学(一般一校あたり)・・・約35000円

・私立大学(共通テスト利用一校あたり)・・・約15000円

これに私立大学入学金(合格した時に入学の権利を確保するための費用)が20万~30万

 

高校3年生に1人5万円の補助だと全然足りないですね。

 

自分でも子供を2人(1人は私立理系修士まで、もう1人も理系修士ですがありがたいことに国立)育てた経験から言うと、

 

大学等の就学支援金の恩恵にあずかれない家庭年収の層の人は、今回も恩恵にあずかれないというのはある意味理不尽さも感じます

 

はっきり言って、自宅外の大学に子供を進学、卒業させようと思えば、夫婦で働いて世帯年収600万、700万くらいだと相当厳しいです。

 

しかもそれが私立理系ともなると、世帯年収1000万でも全然楽なことではありません。

 

大学で学ぶ子供たち、願わくば大学院まで進む子供たちが、

奨学金という名前の借金を背負うことなく『この学費であれば負担できる』と感じられるラインまでは大学の学費を下げる政策を打ち出すなど抜本的な改革が必要だと思います。

 

模擬試験、受験費用1人あたり5万円のしかも低所得者層だけの補助というのは、単に模擬試験実施業者だけに利益を誘導する小手先だけの施策のような気がします。

学習塾運営者としての雑感

田舎の県で学習塾を運営しているものとして、身バレしない程度に書きます。

わが県でも県下一斉の高校受験模擬試験がありますが、模擬試験受験料が数年前に上がって以降(コロナの影響もありますが)受験者数が大きく減っているのが現状です。

 

原因としては

・少子化で高校受験をする中3の生徒の減少

・疲弊する地方経済の中、模擬試験受験料の負担が大きくなっている

・昔は私立高校の学費を負担できないから是が非でも公立高校に合格したいという生徒が大半だったものが、就学支援金制度で低所得者層は実質高校無償化となり、(あまり受験勉強しなくても)私立高校推薦でいいじゃないかという生徒が増え、公立高校向けの模擬試験を受験しなくていいという雰囲気になってきた

 

こういった中、低所得者層の中3模擬試験受験料を補助してくれる制度はありがたいといえばありがたいという気持ちはあります。

 

しかし、低所得層の模擬試験受験者が増えたからと言って、その人たちが塾に通うことにはならないだろうし、そもそも模擬試験受験者が増えたからと言って各塾の利益は上がりません。

(生徒にもらう受験料と模擬試験実施業者に払うお金の差額は微々たるものだからです)

 

結局儲かるのは模擬試験実施業者だと思うとなんだかなあという気持ちになります。

 

まあ、今まで模擬試験を受けることすら許されなかった低所得家庭の生徒が、せめて模擬試験くらいは受けられるようになることは歓迎すべきことだと思うことにします。

 

以上、低所得世帯の高3と中3に大学受験・模試費用を補助へというニュースをうけて雑感でした。