自衛隊希望の大学生、入学時から奨学金~経済的徴兵につながらないか?
自衛隊希望の大学生、入学時から奨学金 月額5万円超 24年度にも支給 防衛人材、一般大に裾野 との見出しが日経新聞に出ていました
記事によると、
防衛省は自衛隊への入隊を望む大学生への奨学金を2024年度にも拡充する。理系のみだった対象を文系にも広げ、大学3年生以降と定める開始時期を入学時に早める。現行で月5万4000円の支給額増額もめざす。防衛大に依存してきた幹部候補生の裾野を一般大にも広げ多様な人材を確保する。
活用するのは1954年の自衛隊創設と同時に始めた「貸費学生」という制度
日本経済新聞2023/6/23
自衛隊希望の大学生、入学時から奨学金 月額5万円超 - 日本経済新聞
自衛隊「貸費学生」とは?
自衛隊貸費学生とは
現在、大学および大学院(専門職大学院を除く)で、理学及び工学を専攻している学生で、卒業(修了)後、その専攻した学術を活かして引き続き自衛隊に勤務する意志を持つ者に対し防衛省より学資金が貸与される制度です。
貸費学生の魅力(自衛隊HPより)
②自衛隊入隊後は防大卒業生や一般幹部候補生と同じ人事管理です。
③自分の勉強した内容を生かして技術系の仕事が可能です。
④大学で勉強に専念することが可能(就職活動は必要ない)です。
⑤学士採用の場合でも、修士進学は可能です。
⑥4年以上かつ学資金貸与期間の1.5倍の期間自衛隊で勤務すれば学資金の返還は免除になります。
⑦貸与金はほかの奨学金制度と比較しても遜色ありません。
⑧採用後、夏季休暇に部隊研修が可能(将来勤務のための素地を養う)です。
つまり現在の、
理工系の3~4年生で卒業後自衛隊に勤務する意思ががあれば学資金月額5万4千円が貸与され、4年以上かつ学資金貸与期間の1.5倍の期間自衛隊で勤務すれば学資金の返還は免除になるという制度を文系学部生にも対象を広げ、貸与開始時期を大学入学時にまで早めるという方針のようです。
もちろん、自衛隊員希望者が減少している中、自衛隊の魅力を様々な形で発信することは必要だと思う。
一方で、この制度の拡充が「経済的徴兵」につながるのではないかという懸念もある。
経済環境が厳しい家庭の学生に、大学で勉学をすることを将来自衛隊に入ることと引き換えにさせることはあってはいけないとも思う。
大学1年生から制度が始まるとなれば、
17歳の高校生が「将来自衛隊に入ることを約束して自衛隊貸費学生制度に応募するかどうかの決断すること」を迫られることにもなる。
早急に結論を出してしまうのではなく、大学全般の学費負担の問題、自衛隊員の待遇問題、そしてこの制度の生み出す危険性を含めて慎重な議論が必要だと思う。
今後もこの件について注視していきたいと思う。
以上、自衛隊希望の大学生、入学時から奨学金との報道~経済的徴兵につながらないか?でした。
追記
防衛省設置法等の一部を改正する法律は2024/4/13に成立しました
2024/4/20公布になっています。
2024/3/24追記
令和6年2月9日提出の「 防衛省設置法等の一部を改正する法律」で前述の懸念が現実のものになろうとしています。
これから大学に進学しようとする17歳あるいは18歳の高校生に、
高校3年生時点で「将来自衛隊に勤務することを条件に」自衛隊貸費学生制度に応募するかどうかの決断を迫るということが現実のものになろうとしています。
写真上段が改正案、下段が今までの条文
https://www.mod.go.jp/j/presiding/houan/pdf/213_240209/09.pdf