知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

【国立大学授業料の自由化を検討】に反対の声を上げたい

【国立大学授業料の自由化を検討】に反対の声を上げたい

www.asahi.com

国が標準額を定める国立大の授業料について、文部科学省は、大学の裁量で金額を決められるようにする「自由化」の是非について検討を始めた。大学の学長や企業関係者らによる有識者会議が21日に始まり、年内に結論を出すことを目指す。国立大への国の交付金が減る中、自由化されれば値上げが相次ぐ可能性もある。

 文科省は国立大の授業料の標準額を年間53万5800円とし、大学の判断で2割増の64万2960円まで増額を認めている。標準額は2005年度から据え置かれてきたが、東京工業大と東京芸術大が19年度入学生から値上げに踏み切った。20年度は千葉大や一橋大、東京医科歯科大も続く。東工大を除く4大学は上限の2割増とした。

 文科省によると、国立大の収入の柱となる国からの「運営費交付金」は19年度で1兆971億円。国立大学が独立行政法人となった04年度から約12%減った。各大学は企業からの委託事業や寄付金などで外部資金の獲得を進めているが、大学の事情に応じて授業料を値上げできる自由化を求める声も上がっている。

 文科省の担当者は「国立大には教育の機会均等という使命がある。私立大のように値上げすればよいというものではないが、検討しないのもおかしい」と話す。授業料だけでなく、入学定員も大学の裁量に委ねるか否かを検討するという。萩生田光一文科相は21日の会見で「各大学の判断で一層柔軟に取り扱うことを可能とするか、検討していただく」と述べた。 

以上朝日新聞2021年2月21日より

 

この記事中の1/28の会議、

正式名称は「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」というそうです。

検討事項はどういうものなのか、検討委員はどういった人が入っているのかについて、国民民主党城井崇議員の下記tweetを備忘のために貼っておきます。

 

この件について、1/25の予算委員会第四分科会で菅直人元総理が萩生田文科大臣に質問をしています。

それに対して、萩生田大臣は、

「自由化を検討するのであって、授業料は上がることもあれば下がることもある」

と答えています。

しかし、「自由化で授業料が下がる」っていう詭弁を誰が信じるのでしょう?

 

国立大学の授業料・入学金はどの位上昇してきたか推移について確認

昭和52年・・・年間授業料96,000円、入学金60,000円(4年間で444,000円)

平成元年・・・年間授業料300,000円、入学金185,400円(4年間で1,385,400円)

令和2年・・・年間授業料585,800円、入学金282,000円(4年間で2,625,200円)

※上限値上げの東京工業大学、東京芸術大学、千葉大学、一橋大学、東京医科歯科大学の場合は令和2年で年間授業料642,960円なので4年間で2,853,840円。

 

この間、約40年間で約6倍の学費負担ということになります。平成に入って以降だけでも約2倍です。

 

「大学等就学支援法」では、中間層は全く救われない

 

2019年5月10日「大学等就学支援法」(俗に言う授業料無償化法)が衆議院で可決成立しました。

www.nikkei.com

 

これで2020年4月から、世帯収入に応じて、大学等の入学金・授業料が支援されるだけではなく、返済不要の給付型奨学金がもらえることになりました。

 

支援の金額等は以下のようになっています。

 

高等教育の無償化制度での支援額

  国公立 私立
  授業料 入学金 授業料 入学金
大学 54万円 28万円 70万円 26万円
短期大学 39万円 17万円 62万円 25万円
高専 23万円 8万円 70万円 13万円
専門学校 17万円 7万円 59万円 16万円

 

給付型奨学金(いずれも年額)

  自宅生 自宅外生
国公立 35万円 80万円
私立 46万円 91万円

 

上記いずれも世帯年収によって3段階で支援する

①住民税非課税世帯(年収270万円未満) 全額支援
②年収270万円~300万円未満 非課税世帯の3分の2を支援
③年収300万円~380万円未満 非課税世帯の3分の1を支援

 

しかし、従来であれば各大学独自の制度によって、授業料が全額免除・半額免除の可能性があった年収400万、500万といった世帯の学生は、制度の狭間で逆に全く恩恵が受けられなくなる可能性が指摘されています。

 

kasikoi.hatenablog.com

 

 

こういった中、もし仮に授業料の自由化が決まり、これ以上の授業料値上げが続けば、「大学等就学支援法」の制度から外れる世帯年収400万程度以上の学生にとっては、国立大学に4年間通うということすらが不可能なことになってしまいます。断固として【国立大学授業料の自由化を検討】に反対の声を上げたいと思います。

 

私立大学の学費・授業料負担はもっと大変

問題は国立大学の授業料自由化問題だけではありません。

ここからは個人的な経験です。

我が家の上の子供は第一志望の最高峰の国立大学には合格できず、それでも本人が納得のできる私立大学(理系学部)に合格進学しました。

 

昨年春にようやく大学院修士課程を経て就職となりましたが、その間の学費負担です。(6年前の記録と記憶があいまいになっているので、今年度の学費一覧を引用しますが、同じような金額だったと思います。)

 

・授業料1,446,000円(年間)

・設備維持費等103,000円(年間)

 合計年額1,549,000円

上記授業料と設備維持費等の6年間分+入学金200,000円が学部入学時と大学院入学時の2回(2回も必要なんて知りませんでした・・・)

6年間累計9,694,000円‼

 

これに加えて、生活費の仕送りです。そこまで考えると足し算、掛け算をする気持ちが起きなくなってしまいました。

 

不幸なことにというか、幸いなことにというか、夫婦共稼ぎの合算所得で、残念なことに色々な給付型奨学金は色々ギリギリで対象外。(何やら成績との絡みで1度だけ10万円の奨学金をいただきました)

 

できれば子供には負担を残させたくないとの思いで、奨学金は学部の4年間は借りさせませんでしたが、流石に修士の2年間は奨学金を借りてもらい、総額約300万円の借金を抱えての社会人船出とさせてしまいました。

 

下の子供は、上の子供と1年間かぶった状態での大学入学でした。国立大学に入ってくれたのでどうにかやっていますが、これが私立大学だったらと思うとゾッとします。ただしこちらも理系で修士までは進みたいようなので、残り4年間親も頑張らなければいけません。

 

こういった大学の学費負担問題を考えると、「子供を産み、育てるのは無理だよね」って思う若い人たちの気持ちもよく分かります。

 

私立大学(特に理系)の学費負担の問題、そして国立大学・私立大学問わず「大学等就学支援法」の制度から外れる世帯年収400万程度以上の学生の親が、

「この位の負担であれば、国立大学だろうと私立大学だろうと本人が望むらなら、どうにか行かせてあげられるよね」

と思える大学の学費問題の抜本的見直しを強く願います。

 

繰り返します、【国立大学授業料の自由化を検討】には断固反対の声を上げたいと思います。