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日本版DBS(性犯罪歴がないことの証明を求める仕組み)学習塾・スポーツクラブは除外で問題はないのか?
子どもと接する職場への就労希望者に、性犯罪歴がないことの証明を求める仕組み「日本版DBS」について、政府が学校や保育所、幼稚園で働く全ての人を対象に含める方向で検討していることがわかった。政府は、今秋にも制度の創設を盛り込んだ関連法案を提出する見通し。
対象として、子どもと接する時間の長い学校や保育所、幼稚園のほか、児童養護施設の職員などを想定。性犯罪の種別については刑法犯を中心に検討を進めている。性犯罪歴がある人については、上限を設けたうえで一定期間、就労できないようにする方向だ。
一方、学習塾やスポーツクラブなどについては、義務化の対象から外れる見通しになっている。
2023/8/3
読売新聞オンラインより
日本版DBSとは何か?
DBS(Disclosure and Barring Service)とはイギリスで導入されている制度。
DBS とは、英国司法省管轄の犯罪証明管理および発行システムのことです。
子どもに関わる職種(定義:18歳未満の子どもに1日2時間以上接するサービス)で働くことを希望する人は、DBSから発行される犯罪証明書が必要。これはボランティアであっても同様に必要なものとなっています。そして、この犯罪証明書を提出することで、初めて就労が可能になるという仕組みです。
今回、日本でもこのイギリスのDBSを参考にして日本版DBSを構築していこうということのようです。
教育現場でのわいせつ行為、現状の問題点
現状日本の法律・制度では、教育現場で児童に対するわいせつ行為で懲戒免職になったとしても、保育の現場でなら働くことが可能です。というのは、教育は文部科学省の管轄で、保育は厚生労働省の管轄のため、規制が存在しないからです。
また、教員がわいせつ行為で逮捕されても、3年で、保育士の場合は2年で復職が可能です。このように、縦割り行政や現状の法制度では、保育・教育現場の性犯罪抑止が出来ていないという課題があり、省庁横断型の今回の日本版DBSという取り組み自体には大いに賛成したいと思います。
日本版DBSでは学習塾・スポーツクラブは除外の問題点
報道によると今後有識者の会議を経て今秋にも立法を目指すとのことですが、気になるのは「学習塾やスポーツクラブなどについては、義務化の対象から外れる見通し」という部分。
もし、その通りの制度となるのであれば、学校や保育所等に証明書を提出したくない人たちが、学習塾やスポーツクラブに流れ込んでくるのではないかという強い懸念があります。
日本版DBSで対象が刑法犯だけであれば骨抜きにならないかという問題点
身バレしない程度に記述しますが、自身が経営している施設でも10年ほど前に、職員を懲戒解雇にした経験があります。
(こちらとしては廃業もありえると思いながら平謝りしかなかったのですが、保護者から「即時懲戒解雇という対応に納得する」と言ってもらいました。)
驚いたのは、その数か月後に該当の人物が他の地域で同業の施設で職員として働いていたということ。
こういった事案の時、対象の子供・親は「事件」にしたくないというという人もいるだろうし、事業者の側も表立って「事件化」はしたくないというのが本音。
そういった人=刑事罰は受けていない人が、数か月後には何食わぬ顔で同じような子供と接する仕事に就いていたのです。
刑事罰を受けていない人の職業選択の自由を奪うのでは、という主張があるのは承知です。
しかしやはり、そういった事案で懲戒解雇になった場合や分限免職となった場合にはその旨を登録する仕組みを作り、少なくても一定期間、学習塾やスポーツクラブ等も含み子供たちと接する職業に就けないようにすることで、子ども・保護者そして事業者も安心できる仕組みとなるのではないかと思います。
これから有識者の会議が続くとのことなので、この問題注視していきたいと思っています。
以上、日本版DBS(性犯罪歴がないことの証明を求める仕組み)学習塾・スポーツクラブは除外で問題はないのか?私見を綴ってみました。
塾などは適合施設であることを示すマークを与える案
追記 2023/8/17
以下時事通信の記事より抜粋します
一方、塾やスポーツクラブなど民間教育事業者の団体に有識者会議がヒアリングしたところ、「習い事はジャンルを問わず、DBS制度に含めてほしい」との意見が出たという。
ただ、塾などは職務を定める法律がないため、義務化は困難。採用の可否を判断する際に犯罪歴の有無を任意で確かめている事業者に、適合施設であることを示すマークを与える案が出ている。
今後どういう仕組みになっていくのか注視したいと思います。
追記2023/9/23
日本版DBS法案秋の臨時国会提出見送りへ