知の泉

地方都市で子供に携わる仕事を、20年くらいやってます。受験・子育て・教育に関することやその他自分の知的好奇心をくすぐった話題を呟いています。時々自分で食べて美味しかったもの、これ欲しいなあというものも呟いたりしてます。

英語外部試験導入、やはり問題!

英語外部試験導入、やはり問題!

以前のエントリー以降、様々状況が変わってきていますが、現時点で「英語外部試験導入は問題だ」と思うところをまとめてみます。

①どうやって、本来の目的の異なる英語外部試験で受験生の英語力を比べるというのか

例えば、IELTSは本来「海外留学や研修のための英語力を証明する必要のある人、イギリス、カナダ、オーストラリアに移住申請する人」向けのテスト

TOEICは「(ビジネスの)コミュニケーションに必要な能力を客観的に評価する」

TEAPは「大学教育レベルにふさわしい英語力を正確に測定する」

というように本来の目的が異なります。

そこでCERF(ヨーロッパ言語共通参照枠)という尺度が登場します。このCERFという尺度でどの民間試験を受けても、どのレベルの英語力があるのかが分かるということになっています。

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しかし、上の資料を見ても分かるように、次々と基準が変更になり、しかもどういう調査をもとに、どういう科学的な根拠で変更が行われたのかが、はっきりとしません。いったいこの変更がなされた時の議事録などはあるのでしょうか?ないのでしょうか?

 

文教委員会で、この辺を川口議員とかが質問して、

「議事録を出せない」とか、あるいは「ありません」とか答えが返ってきたら、「何か恣意的な力が働いたのでは?」と疑わざるを得ませんよね。

 

とにかく、こういう不透明な尺度で、本来異なる目的の英語外部試験を受けた生徒の英語力を比べられるはずもありません。

 

東大が、民間試験の公平性に疑問の声を上げるのも無理はありません。

mainichi.jp

 ②英語外部試験GTECを実施するベネッセが、公式問題集と称して対策問題を市販したり、学校を通じて対策問題を販売するのはいかがなものか

大学入試と言う、いわば公的な試験に使うことになるGTEC。その胴元のベネッセから「(来年からの新傾向にも対応の)公式ガイドブック」なるものを発売するようです。

 

民間会社だから利益を出すのが目的なのは分かりますが、あまりにもあからさまです。

 

センター試験であれば、学習要領が変わった時などに、事前に無料で 試行問題を公表します。

 

それを「来年から新傾向問題になりますよ」

「中身はうちで売り出す公式問題集買ってね」というのはあまりに酷いと考えます。

 

 

kasikoi.hatenablog.com

 

③英語外部試験を大学入試に利用するシステムは2021年入試に間に合うのか?

文部科学省によると、

 

高校2年の時の成績を活用できる例外を設けます。
・受検に極めて不便な地域にお住まいであるなど負担の軽減が必要な家庭の受験生で、高校2年の時点で十分な成績(すなわち、文部科学省が公表しているCEFR対照表のB2以上に該当する結果)を得た人
・病気で長期間入院しているなど受検の機会が得られない人

ということになっています。

民間の英語4技能試験の結果の提供について(平成30年8月10日):文部科学省

 

 ということは、来年、高校2年生で英語外部試験を受験した場合は、その成績が、2021年度の入試に利用される可能性があるということです。

 

複数の、英語外部試験を受けた人の、名寄せ作業をどのようにしていくのかそのシステムは来年に間に合うのでしょうか

 

そもそも、高校3年生で2回まで英語外部試験を受けてよいことになりますが…

ズルして3回以上試験を受けたりする人はでないのでしょうか?

 

それを防ぐためには、受験生一人一人に固有の番号を振るなどが必要になるのではないでしょうか?

 

それ本当にシステム構築が順調にいっているのでしょうか?

 

また、英語外部試験を利用する大学には、様々な英語外部試の、様々な成績データが提供されることになると思います。それを合否判定に活かすためのシステムを各大学が作る必要があると思いますが、それも間に合うのでしょうか?(このへんは門外漢なので、簡単なことなのかもしれませんが・・・)

 

④GTECの高校での一括実施で本当に公平性・厳密性は保てるのか?

高校での実施では、試験監督は高校の先生以外となるようです。しかし、試験問題は事前に学校に届くことになるでしょうし、本当に問題漏洩等の危険性はないのでしょうか?自分の学校の生徒かわいさに・・・ってことはないと言えるのでしょうか?

 

また、高校の先生以外の試験監督を想定しているようですが、いったい誰を想定しているのでしょう? 大学生アルバイトですか? 現状でも、センター試験を実施する大学の職員は、事前に何度も何度も打ち合わせをし、「緊張して」試験に臨んでいるのを知っています。意識も高く優秀なアルバイトもいるでしょうが、そうでないアルバイトが混じったりしませんか?

 

しかも、タブレット端末でのスピーキング録音。様々なトラブルがあることは容易に想像がつきます。全国の多くの高校で一斉に実施する試験。それを監督する『優秀な』人をどうやって確保するのか目途がたっていますか? 実施する各高校に丸投げですか?

 

また、受験生の利害関係者(親戚・家族など)が試験監督に紛れ込む可能性は本当にないのでしょうか?

 

⑤英検の面接官は確保できるのか?利害関係者は本当に排除できるか?

同じことは、英検のスピーキングにも言えます。現状でも「高校の英語の先生」「引退した先生」が面接官であったりします。全国の高校3年生がこれまで以上に受験することになったとき、面接官の数は確保できる目途がたっているのでしょうか?

受験生の関係者が(昔習ったことがある先生とか・・・)面接官とかってことを避けるとは本当に100%排除できるのでしょうか?

 

その他、

 

・英検外部試験の会場の少なさによる地域格差。

 

・民間外部試験をの受験料負担(GTECCBTで9000円、TEAPで15000円、受ける人は少ないでしょうがケンブリッジなんて1回27,000円ですよ。)。これを高3で2回。実際は、高1、高2の時から練習として受けるのですよ。

 

・何か問題が発生した時(問題漏洩、不適切問題、システム障害によるスコア消滅)いったい誰が責任を負うことになるのか?

 

まだ他にも漏れていることはたくさんありそうですが、とにかく2021年度入試導入だと不利益を被る受験生がでる可能性が大きすぎます。

 

できることなら、以上のような不安材料を解消してもらうのが良いのですが、全てを解消できるとは思わないので、勇気ある「英語民間試験導入撤回」を提言したいと思います。