ロボット学者・古田貴之さんが語ったこと「人の心を動かして文化の痕跡を残したい」~高橋源一郎飛ぶ教室2020/7/31より~
千葉工業大学未来ロボット技術研究センター工学博士 古田貴之さん。
東日本震災の時に、原発建屋の中で動いていたロボットってほぼ古田貴之さんのロボットだったのだそうです。
その古田貴之さんが、高橋源一郎の飛ぶ教室というラジオ番組で語っていたことを、記憶に残すために一部書き起こしておきます。
(ロボット学者ではない?)
僕的には違うんです。僕的には多様性というのがテーマで、やりたいことは
たった一個なんですよ。ほんとに人と人とをつないで社会を作ることと
その中で人の社会とか文化というのは何からできているんだとろうというのをずっと考えるのがテーマでした。
中略
実はこの世の職業ってなんだろうと考えていて
僕はロボット学者とかよく言われますが、実はやっていることって皆さんと全くと同じたった一個のことなんです。
それは人の心を動かして文化の痕跡を残すことなんです。
中略
(難病で生死をさまよっていた時)
その時気づいたことがある。
この世に僕の物はほとんど何もない。
つまり、ぼくはいま服も来ているし、こうやってPCも見てる携帯電話も使っている、貯金もいくばくかはある。
その中で僕の物は何一つもないんです。全部借りものなんです。なぜなら100年後には僕の物でない。
すると、実はこの人生で残せるものはたった二つだけなんですよ。
それは、たぶん生物として子孫を残すことと、そして何よりも自分の仕事を残し、文化の痕跡を残すことだと14歳の時思ったんです。
(車いすに乗っていた時)多様性って何なんだろうと思ったんです。
当時車いす乗っていると、みんな僕のことを若いのにかわいそうに頑張ってって言われるんですよ。
まてまて、これは僕の個性だよ。例えば僕が腕時計をしているのは、体内時計が不正確だから。眼鏡だってかけてるじゃん、視力が弱いから。たまたま僕は足が弱いから車いすなんだ。なんで個性の一つを他人との差として見られるのかなと。
(中略)
この世の中って色んな人で混ざって混ざって、たぶん人と混ざるのが怖いからみな心の中にバリアを張って他人との違いを強調したり、あえて他人と同じになって一つの方向を向いたりするんです。それはとても危険なことで、多様性がなくなり、文化と人の営みの死を意味するんだと思うんです。
(中略)
(バク転をするロボットに言及されて)
技術何ていうものはニンジンキャベツ大根と同じなんです。
本当に僕がやりたいことは、これらの技術を使って、どんだけ人の心を動かして、人々の世の中に役に立って、なんといっても人と人とをつなげて社会を作ることなんです。
(中略)
この20年間のテーマは、科学技術をツールとして、どう人と人とをつなげて、コミュニティーを作って、人の幸せに少しでも貢献できるかということなんですよね。
果たして、自分は文化の痕跡を残しつつあるのだろうか?
人の幸せに少しでも貢献できているのか?
自問しながら古田貴之さんの話をききました。
以上、ロボット学者・古田貴之さんが語ったこと「人の心を動かして文化の痕跡を残したい」~高橋源一郎飛ぶ教室より書き起こし~