知の泉

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【学校9月入学】メリット・問題点・課題ついて考えてみる~9月入学に賛成?反対?~

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【学校9月入学】メリット・問題点・課題ついて考えてみる~9月入学に賛成?反対?~

kiitaka.net

 

コロナ緊急事態宣言の中、4/23 城井崇議員がブログにて「9月入学・9月新学期」案を本格的に検討したいと述べています。

 

城井崇議員ブログ4/23より

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、学校休校が長期化、子どもの学習継続やキャッチアップが難しい状況が続いている。教育現場での努力も続いているがどうしても限定的であり、このままでは1学期分の学びが失われる可能性が高い。その上に、家庭の経済格差が教育の機会格差に直結する状況になる。収束が見えない中で、実施できなかった授業を補習することを求められる教育現場は徐々に追い込まれている。ほかにも、受験生の立場からすれば、外部検定試験の受験機会の減少、地域格差や情報格差、一般入試より早く始まる推薦・AO入試の実施の可否などの不安といった問題が山積している。

(中略)

そこで私は、ポストコロナ社会を見据え、9月に改めて新年度をスタートするという、学事暦を変更する提案(いわゆる「9月入学・9月新学期」案)を本格検討することとした。

こうした点を国会で議論に供するにあたり、まず国民民主党で「文部科学部門9月入学検討ワーキングチーム」(仮称)を立ち上げることとした。共同会派「立国社」文部科学部会役員会でも議論を深めることとしている。

 

以前から、海外からの学生の受け入れ、逆に海外の学校への入学を考えると9月入学が良いのではという議論はありました。

 

少し古い資料ですが「9月入学」に関する検討の経緯はこちら⇒

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/3bunka/dai6/siryou4.pdf

 

以下、コロナ緊急事態宣言で正常な学校運営ができていない今、自分なりの考えを整理するためにも「9月入学」のメリット・問題点・課題ついて私見を記しておきたいと思います

 

【学校9月入学】メリット 自粛期間中の学習の学校間格差を埋められる可能性

 ・文部科学省は全国の自治体に対して、2万5000校を超える小中学校や高校などにどのような学習支援をしているか調査。

・教科書やプリントなど紙の教材を活用した家庭学習はすべての自治体が指導

一方、
〇デジタル教材を活用した家庭学習を指導しているところは29%
〇テレビ放送を活用した家庭学習を指導しているところは24%
〇教育委員会などが作成した動画で学習支援しているところは10%
〇パソコンなどの端末を使って対面でのオンライン指導に取り組んでいるところは5%

 

コロナによる学校休校で、それぞれの学校・自治体でそれぞれの努力、工夫をしていることは分かりますが、対応はバラバラだということが分かります。

 

仮に、今後緊急事態宣言下での休校が長引いた場合でも、現在の4月入学を9月入学に移行することによって、半年間の余裕ができます。

 

一斉に登校が難しい地域があったとしても、分散登校で実際に生徒の顔を見ながらの指導も可能になり、 学校間あるいは家庭の通信環境の格差も緩和できるのではないでしょうか?

 

城井議員も指摘しているように、今後デジタル教科書・オンライン教育・遠隔授業を併用する「ホームスクーリング」の導入を促進していけば、今回のコロナに限らず災害時の対応、不登校生や特別支援教育も大きく変わっていくと思うので、それも同時進行で考えていかなければいけないのではと思います。

www3.nhk.or.jp

【学校9月入学】メリット 休校期間に失われた学習時間が確保できる

愛知県では5月末までの休校となるようです。春休み期間をはさむとはいえ、これで3月、4月、5月と3か月間の休校です。

 

前述のように各学校や自治体で様々な学習支援をしているとはいえ、この3か月の休校は大きいです。

 

例えば、1月に行われる大学入学共通テスト。

中高一貫校は別にして、公立の高校での生徒は、英国数は1,2年で学習したとは言え、復習・演習といった時間が絶対的に不足します。

理科・地歴公民も3年時の履修になっているものに至っては、まともに範囲の授業を終えることができずに「あとは自分でやっておいてね」ということになりかねません。

 

高校入試もそうです。3年間の学習範囲をまともに終えることなく入試がやってくることになります。

 

現在のカリキュラムになって、中学歴史は中3の一学期に食い込んでの学習になっており、昨年まででも公民の最後の方は大分端折っての授業になっている学校が多くあります。

 

こんな状態では、今年は公民の全範囲を授業で終えることは不可能なのではないでしょうか?

 

大学生もそうです。集団の講義はどうにか遠隔授業で対応したとしても、実験・実習あるいは芸術系の創作活動など、実質ナシになっているものもあります。

 

もし、仮に学校9月入学に移行となれば、先生も生徒も多少ゆとりをもって全範囲の学習を終える、あるいは想定されていた実験・実習を行うことができるというメリットがあるのではないでしょうか。

 

【学校9月入学】メリット 失われた学生生活を取り戻せるかもしれない

コロナ休校で、修学旅行・学校祭・体育祭、あるいは部活動の大会・発表が延期・中止になっています。

 

最終学年のそういった行事・大会・を目指して努力を重ねてきた生徒たちのことを思うと胸が痛みます。

 

今後、コロナの自粛期間がどの程度続くのかは分かりません。スペイン風邪の時のように第二波、第三波が来るのかもしれません。

 

しかし、9月入学への移行=つまり卒業時期が7月末頃となれば、全国規模の大会は無理にしても、地方大会、学校定期演奏会レベルのことは実施できるタイミングがあるのかもしれません。

 

学園祭や体育祭だって秋口以降にタイミングを見ながら実施できるかもしれません。

 

9月入学への移行は、そういった失われた学生生活を取り戻せる可能性があるというメリットがあるのではないでしょうか。

 

【学校9月入学への移行】メリット 現在のスケジュールでの大学入試は実施不可能なのでは?

現在の大学入試のスケジュールでは、

総合型選抜(旧AO入試)は9/1以降開始

学校推薦型選抜(旧推薦入試)は11/1以降開始となっています。

共通テストは1/16,17となっています。

 

総合型選抜、学校推薦型選抜では評定平均〇〇以上といった条件がついていることも多いです。

 

これだけ休校が続いている状態、(あるいは休校がもう少し続いた場合)どうやって高校は生徒の評価をすればよいのでしょう?

 

また、様々なスポーツ文化芸術分野での活躍の場を失った生徒たちは、客観的な成績がない状態で、何をアピールして総合型選抜、学校推薦型選抜の入試に臨めばよいのでしょう?

 

英語民間試験も、今後予定通り実施できるかどうかは不明です。英語民間試験が出願条件あるいは有利になるような入試はどうなるのでしょう?

 

また、下記の記事で、文科省は総合型選抜、学校推薦型選抜の募集を遅らせるとしていますが、「総合型選抜がダメだったら一般入試」と思っている生徒たちは、どうやって総合型選抜の準備と一般入試のための準備をしていくのでしょう?

 

想像以上に、総合型選抜(旧AO)入試の準備は生徒も先生も大変です。学校現場も一人一人に先生が張り付いた状態で指導に当たるケースも多いです。

 

それが、年末ぎりぎりまで、しかも一般入試の勉強と並行して続くかと思うと、高校現場の負担は相当なものになります。

 

私は医学の専門家ではないので、はっきりしたことは分かりません。しかし、インフルエンザが寒い時期に蔓延するように、コロナが寒い時期=共通テストの時期に再び蔓延するということはないのでしょうか?

 

もちろん、仮に6~7月に大学入試で、9月入学に移行したとしても、来年の6~7月にコロナの心配がなく共通テストが実施できるかどうかはよく分かりません。しかし、素人ながらに考えると寒い1月に共通テスト実施というよりは危険度が下がっているというメリットはないでしょうか?(この辺は専門家の方々に逆にお聞きしたいです。)

 

www.asahi.com

【学校9月入学】メリット 就職活動・各種試験が先延ばしできる

3月以降予定されていた、企業の合同説明会などが中止・延期になっています。特に地方大学の学生は完全に足止めを食らっている状態です。

 

また、6月~7月には教員採用試験も順次行われることになっています。

 

果たしてこの状態で教員採用試験を実施できるのでしょうか?

 

学校が全て9月入学=7月末卒業=入社・勤務開始も9月となれば、半年余裕をもって学生も就職活動・各種試験を受けることができるし、受け入れる側も余裕をもって日程を設定・あるいは準備できるというメリットもありそうです。 

 


 

いずれにしても、城井議員のブログによると

『共同会派「立国社」文部科学部会役員会でも議論を深めることとしている』

ということなので、メリット・デメリット含めてしっかりと議論をし、政府与党に早急に提言をしていってくれればと思っています。 

 

 

「9月入学」関連記事追記 (4/25)

 

★橋本徹氏も9月入学について言及

headlines.yahoo.co.jp

★国民民主党、9月入学検討チーム4/27初会合

www.jiji.com

★萩生田文科大臣「9月入学」も選択肢の一つと発言

www.yomiuri.co.jp

★尾木ママ「【9月新学期制度】の検討・研究に着手してほしい

headlines.yahoo.co.jp

 ★日本教育学会5/11声明「時間をかけた丁寧な社会的論議が必要で、拙速な導入を決定しないよう求める」(5/12追記)

www.jiji.com


【学校9月入学】問題点・課題

今度は、学校9月入学を実施することになった時の問題点・課題点について考えてみます。

【学校9月入学】問題点・課題~本当に生徒・学生・保護者・学校現場は9月入学にみんな賛成なのか?

上記の記事で尾木ママは「保護者の方々からも賛成の声が圧倒的に多いです」と述べています。

 

本当にそうなのでしょうか?

 

以下、ツイッターで拾った声や、自分の周りの人に聞いた声です。

・4年間の大学生活だと思っていたのが4年半になれば、その分家賃・仕送りが半年分負担増になる。(大学生保護者)

・そんなことが決まったら1年半も気持ちが持つかどうか考えることすらできない(浪人生)

・1月が共通テストと思って生徒に頑張らせているのに、そこから数か月先に延期だと生徒も指導の教師も気持ちが持たない(高3担当教師)

・(9月入学案があると聞いて)え~!英語民間試験で振り回されたし、今更入試時期変更なんて!もうこれ以上自分たちを振り回さないで欲しい。(高3)

 

英語民間試験・記述式延期の時は、多くの学生が声を上げました。

今回話題に上がりだしている9月入学案について、もちろん今後の感染の終息状況、休校状況によるのでしょうが、最終的には政治判断が必要だとは思います。

 

しかし、生徒・学生・先生・保護者の、9月入学に賛成・反対の声を十分くみ取ってからの判断が必要だと思います。

 

【学校9月入学】問題点・課題~学費・家賃・仕送り負担増に配慮を~

仮に小中高・大学が一斉に9月入学(7月または8月入試&卒業)に移行となった場合、今年度に関しては(休校期間があるとはいえ)在籍期間が1年半となります。その間の学費が1年半分になるといったことが合ってはいけないと思います。

 

また、通常学費を年間分納めている大学受験浪人生。

9月入学になって、入試が6月~8月まで延期されたとして、その延長分の予備校学費負担に関しても配慮が必要です。

生徒・保護者が余分に負担するのか、予備校がその分持ち出しで授業するのか・・・こういった課題にも検討・配慮が必要です。

 

あるいは自宅外生の家賃・生活費の負担増分に対する援助・補助もしっかりとしたものにしてもらいたいと思います。

 

5/15追記:文科省の試算では9月入学に伴い、小中高生がいる家庭が追加で負担する金額の総額は2.5兆円に上るとのこと。

 

2017年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると18歳以下の児童生徒のいる世帯は約1173万とのことなので単純計算では、9月入学に移行することで1世帯当たり約21万円の負担増ということになるのでしょうか?

 

追加費用には、翌年の8月まで同じ学年で学習する期間が5カ月延びることによる学校教育費や給食費、学校外活動に関する費用などが含まれるそうです。

 

なお、以下の記事にはありませんが5/15の衆議院文部科学委員会での柴山議員の質問に対しての答弁を聞きなおしましたが、9月入学で5か月後ろ倒しになった時の負担増額は大学生で1.4兆円、内学部生が1.1兆円となるそうです。

 

なお、柴山議員の質問の意図としては、「こんなに家庭の負担が増えて大変だよね」という感じではなく、9月入学にするのであればそれだけの負担を国が覚悟しなければいけないですねというように聞こえました。

www.jiji.com

【学校9月入学】問題点・課題~特に受験学年の児童生徒の心のケアが必要~

「来春の受験までは何とか頑張る」と思っていた受験生は、入試が延期となることで心に過度のストレスがかかることが予想されます。

どういった対策が考えられるのか分かりませんが、これも十分な配慮が必要となります。 

【学校9月入学】問題点・課題~来年夏は東京オリンピック~

私自身は、延期された東京オリンピックが来年夏に開催できるとは考えていませんし、開催すべきとも思っていません。

 

しかしもし仮に、開催されたとすれば、来年の7月~8月に全国規模の大学入試は同時期に行うことができるのでしょうか?仮に日本はコロナが終息していたとしても、世界規模では終息していない国々があることが予想されます。

 

そういった状態で(コロナ保菌の可能性のある)様々な国々の人がオリンピックで日本に来ている状態で、全国規模の大学入試は可能なのでしょうか?

 

【学校9月入学】問題点・課題~一旦9月にするにしても再延期の最悪の事態も想定するべき~

仮に、上記のような問題点に十分配慮をしつつ課題をクリアし、小中高・大学をすべて9月入学に移行したとします。

 

入試は6月~8月にかけて実施ということになるのでしょうが、万万万が一、その時期にコロナ肺炎の第二波、第三波が日本を襲っていた場合はどうなるのでしょう?

 

一旦半年延期した学年歴を再度延期するということは、余りに影響とショックが大きいものとなります。

 

いっそ、仮に9月入学に移行するとしても、

「小中高・大学の入学は9月に移行する。ただし、コロナ肺炎の蔓延状況によってはさらに半年(次の3月)まで延期する可能性があり、その判断は2021年5月に行うこととする」といった最悪の事態を想定した発表が良いのではないかと考えたりもします。

【学校9月入学】問題点・課題~前川喜平氏「もし本当にやるなら周到な準備と経過措置が必要だ。コロナに乗じて議論すべきことではない。」とツイート

4/27、前川喜平氏は「もし本当にやるなら周到な準備と経過措置が必要だ。コロナに乗じて議論すべきことではない。」とツイート。

 

昨年の、英語民間試験の時の前川氏のツイートにも、賛成・反対のリプが並んだのを思い出しますが、今回も様々なリプが並んでいます。

 

良いにつけ、悪いにつけ、前川氏の発言で逆に「9月入学」が政治問題化しだす可能性が出だしたような気がします。

 

この問題は、与党野党の立場関係なく、本当にどうすることが子供たちにとって望ましい方策なのかを議論してもらいたいと考えます。

(※この部分は4/28追記)

 【学校9月入学】問題点・課題~小学校も9月入学なら、来年9月は児童数4割増のマンモス学年ができる?

仮に、小中高、大学が一斉に9月入学に移行するとすれば、来年9月に小学校に入学する児童数は約4割増しとなります。 

 

※この部分は 4/29に追記しました。

 

この辺は下記のブログに改めてまとめてみてありますのでご覧ください。

 

kasikoi.hatenablog.com

 


以上、【学校9月入学】メリット・問題点・課題ついて考えてみました。

個人的には9月入学への移行問題は、「生徒・保護者・学校現場の意見」を反映し、様々な問題点・課題を解決しつつ(9月入学の結論ありきではなく)検討を進めていかなければいけないと感じています。

(4/27 問題点・課題の部分を加筆)

 

なお、本日4/27国民民主党の9月入学検討ワーキングチームの初会合が行われました。

城井崇さんのツイートで想定シナリオ・主なメリット、デメリットが確認できます。

 

自民党:一斉休校の長期化を踏まえた「9月入学・始業」の是非を話し合う「秋季入学制度検討ワーキングチーム」(座長・柴山昌彦前文部科学相)を設置。5/12党本部で初会合とのこと。(5/12追記)

www.jiji.com

 

 

 

kasikoi.hatenablog.com

 

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