3つのログ(スタディログ・ライフログ・アシストログ)をマイナンバーで紐づけ⁈税務情報まで追跡⁉~教育再生会議提言~
2021/6/4教育再生会議が「新たな学びの在り方について」という第12次提言をしたとの朝日新聞デジタルの記事。
政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・前早稲田大総長)は3日、子どもの学習や成長のデータを利活用し、指導や行政に生かすことなどを盛り込んだ第12次提言を菅義偉首相に渡した。(中略)学習や生活・健康に関するデータを個々の学びのふり返りや指導に生かすことを進言。国には、データを元にした政策立案を求めた。マイナンバー制度などを活用し、転校時に学習データを持ち運ぶ方法の検討も求めた。
その中に、「マイナンバーの活用」という気になる文字を見つけたので、どんな提言だったのか2021/6/3の教育再生会議の提言の原文にざっと目を通してみました。(A4で45P分あります)
ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)
令 和 3 年 6 月 3 日
教 育 再 生 実 行 会 議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai12_teigen_1.pdf
以下気になった個所を抜粋しておきます。
3つのログとは?スタディログ・ライフログ・アシストログの3つ
ブログ表題の3つのログとはスタディログ・ライフログ・アシストログの3つです。
提言書7~8P
(学習履歴等の教育データの利活用)
○ 国及び地方公共団体は、
①児童生徒に関するデータ(学習履歴(スタディ・ログ)や
生活・健康に関するデータ(ライフ・ログ))、
②教師の指導・支援等に関するデータ(アシスト・ログ)、
③学校・自治体に関する行政データ等の取得や効果的な活用※25を促進する。また、学習マネジメントシステム(学習 e ポータル:初等中等教育版 LMS)や、CBT、電子化された健康診断情報の活用を促進する。その際、学習者の主体的な学びを支援するための相談等の機能も検討する。
○ 国は、これらの教育データについて、個人が学習等に活用する際のサポート、教師による個に応じた指導や支援、蓄積されたビッグデータの分析による新たな知見の創出や政策への反映等を実現するため、環境の構築に向けた全体構想を示す。
※25 大阪市では、「エビデンスに基づいた学校教育の改善に向けた実証事業」(統合型校務支援システムを発展させ、これらの校務の情報を学習記録データ等と有効につなげ、学びを可視化することを通じ、学習指導や生徒指導等の質の向上や、学級・学校運営の改善等に資するための実証研究)により、3つのログの取得や効果的な活用を推進している。
マイナンバーで3つのログ(スタディログ・ライフログ・アシストログ)を紐づけ⁈
提言書41~42P
○ 国及び地方公共団体は、プライバシーの保護等を万全にし関係者の理解を得ることを前提に、データによる現状把握や各データの紐づけ(ID での紐づけの検討を含む)を行い、
①子供の成長過程を解明するための長期的な縦断調査(学校卒業後のデータの把握を含む)、
②学校単位の各データの紐づけと定点観測のための継続的なデータ収集、
③教師のデータの統合と調査、
④ランダム化比較試験(RCT)や回帰不連続設計法(RD)98を含む実証分析の積極的な活用を検討する。
(教育データ基盤の整備)
○ 国は、初等中等教育段階における教育データの標準化を推進するとともに、大学をはじめ生涯を通じた学びにおける教育データ利活用のため、更なる標準化を検討する。
○ 国は、ユニバーサル ID や認証基盤の在り方を検討する(マイナンバー制度の活用を含む)。その際、転校時等の教育データの持ち運び等の方策、不利益となる情報に関する本人・保護者の意向も踏まえた取扱いなどについても慎重に検討し、再挑戦が妨げ
られることがないよう配慮する。
データを採用活動に利用したり税務情報まで追跡⁉
提言書33Pと36P
(なぜか同じような表現が2回出てきています。)
○ 産業界は、企業の採用・雇用の多様化・複線化が進展しつつある状況を踏まえ、これを更に推進する。また、大学や学生だけでなく広く社会に対して、学修成果(ディプロマ・サプリメントや学修ポートフォリオなど)を重視した採用選考活動の実施
提言書22P
(大学の)「出口における質保証」の取組を進める上では、データの収集・分析、調査研究を通じて、どのような教育実践がどのような効果をもたらしているのかを明らかにし、知見の蓄積と共有を図ることが必要です。そのためには、同一の学生を長期にわたって追跡したデータを構築すること、行政データと大学の業務データを照合して研究利用できるようにすることが重要です。海外では、例えば、税務情報等を用いて同一の学生を卒業後まで長期にわたり追跡し、大学に対する投資の費用対効果を評価するといった研究事例があります。我が国においても、このような行政データの研究への利活用の推進が望まれます。
高校・教育関係者であれば、先般のJAPAN e-Portfolio問題が記憶に新しいところです。
大学入試に必要だからと大騒ぎして高校生に学習・部活動・資格試験についてといった情報をデジタルで記録させました。
挙句の果てがJAPAN e-Portfolioの運用はベネッセに再委託されていた「JAPAN e-Portfolio」の運用に、ベネッセのIDが使われていることが問題視され、また教育情報管理機構の赤字決算も明らかになり、文科省は運営許可取り消しを決め、一生懸命入力した高校生、それを指導した高校の先生方にしてみれば
「何だったのさ‼」という気持ちになったのも当然です。
さて、今回の提言
e-Portfolioの時と異なると感じたのは、
①「大学入試に使う」という名目ではない
②データの活用の主語が国や自治体になっている
③紐づけIDは民間のものではない
④企業の採用活動・社会に出てからまでデータを使おうとしている
という点でしょうか?
データを実際に管理運営するのはきっとどこかの民間会社への委託になるのではないでしょうか?
その時にまた、かつて見たことののある会社の影がちらついたり、莫大な金額の中抜きが行われたりしないでしょうか?
電話番号の場所に行ってみたら実体のないオフィスだったということはまさかもうないですよね。
今回の3つのログは大学に入ってから、あるいは企業の採用、あるいは社会に出てからにまで効果が及ぶという点で、e-Portfolioよりもさらに酷いものになる可能性があるとも言えます。わざわざ「採用活動」あるいは「税務情報を用いて追跡」という海外の事例まで書いてあります。
コロナ禍、オリンピックの問題で揺れる昨今、気が付かない所で着々と色々なことが先に進もうとしています。
しっかりと目配りしていかないといけません。
以上3つのログ(スタディログ・ライフログ・アシストログ)をマイナンバーで紐づけ⁈税務情報まで追跡⁉~教育再生会議提言~でした。